東京花魁物語2

□終
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ーーーごくり











「っぐっあ!?」



パリン!!!!と茶碗が落ちて、割れる。
あたしの冷たい視線の先には、苦しみもがく氷室さんがいた。




「お前っ…なに、を、盛った…ぁ"!」




喉を掻き毟ってのたうち回る彼に鼻で笑い、
ガラスの小瓶を見せた。



「青酸カリよ」



すっ、と彼の元まで歩くと、彼はうめき声をあげながら涙を流していた。



「あたしの幸せは、あなたが死ぬこと」


割れた茶碗の欠片を拾い上げ、握るとそれが皮膚に刺さって血が溢れた。


「征十郎はきっと、あたしと氷室さんが幸せに暮らすことを望むでしょうね」


そして血まみれになった欠片を投げ捨てると、彼を見下ろした。



「だけど、あたしの中で愛しているのは彼だけなの。
あんたなんかっ…!!!」



ああ、憎い。
彼の死体をそのままどこかへやったお前が、死ぬほど憎い。
彼の死因すら隠したお前が。
それもなに食わぬ顔であたしに毎日毎日優しくしてきて、
愛してると囁いたお前が。



「征十郎からの手紙で、決心がついたの。
あたしにとっての幸せってなんだろうって。」



征十郎が死んだところを笑顔で見下ろしてたお前が嫌い。
自殺しようとしたあたしを嘲笑したお前が。



「あたしの、幸せ。叶えてくれるよね?」



あんたの死で。




赤司財閥を潰したお前が。












そして氷室さんはあたしに手を伸ばした。
それを振り払うと、彼は動かなくなった。




「あっははははは!!!!」


あの頃と同じ。
嘲笑して、彼のスーツのポケットからリボルバーを抜き取った。

重い。

銃が入っていた。
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