東京花魁物語
□伍
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アタシは目覚めて、氷室さんを見送った。
彼は帰り際キスをしてきて、
「また来るよ」とだけ言って帰っていった。
バタバタ…
「許さないっ!!氷室さんの相手したの!?!?」
前からリコが走ってきた。
「おはよ…てか走りすぎ」
べちっと頭を叩くと、リコははっとしてアタシの腰をさすった。
「初めてはどうだった?」
ニヤニヤしながら言ってくるから、リコをべりっとはがす。
「…………まぁ、腰が痛かったよ」
よしよしと頭を撫でられて、振り向くとリツが。
「お前もやっと俺達の仲間入りだ!初めてが氷室さんか…うらやましい!!」
さらに後ろから来た香織も、うんうんと頷いている。
つか、なんでそんなに人気なの?
「…氷室さんて、何者?」
と聞くとリコにえっ!?!?と言われた。
「そっか、許さないは知らないか!氷室さんはとにかく美人で、でも気に入った子としかヤらないの!それに若社長だし、最高!!」
もちろんこの店ではカレンと許さないしか抱かれてないけどね!と
リコは嬉しそうに言う。
「そうだな。このまま氷室さんがお前の馴染み客になれば、お前はカレンを抜いて花魁道まっしぐら!」
一人、香織が難しそうな顔をしていた。
どうした?と聞くと、遠慮がちに話し出した。
「あの。カレンさんは氷室さんに一目惚れして、熱烈に片想いしてるんです。
しかも頼んでも頼んでも抱いてくれないから、
一度だけって抱いてもらっただけらしいんですよ」
へぇーとリコが感心して、アタシに抱きついてくる。
「じゃあ許さない、ずっいぶん気に入られたねぇー!」
さすがアタシの友達!!と騒ぎ始めるから、頭を叩いて静かにさせた。