東京花魁物語

□四
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誰かが、呼んでる…




あたしのことを。




誰かが、叫んでる…





あたしの耳元で。

























「許さないっ!!!!!!!!」








一番大きい怒声が聞こえてきたと思うと、
微かに視界がひらけた。






目覚めたそこは夢の続き…











ではなく、見慣れた和室。





アタシの部屋だった。







「っ!!!!女将さん!!許さないが!!!!」





視界いっぱいに広がるのは、氷室さんの顔だった。


なんで、泣いてるんですか?








「………むろ、さん…」



「話さないで、寝ていて!!」





氷室さんの隣に、泣きながら座っているリコがアタシの肩を押す。






「………った…」




ヒリッと肩には鋭い痛みが走った。



見ると、そこには包帯が巻いてある。






「とにかく、よかったわよ…っほんとに、もう…!心配したのよっ!」



ぼろぼろと涙を流す、リコ。




「俺にまで心配かけさせて!アホかっ…!!」



怒って泣きながら怒鳴る、リツ。




「本当に良かったです。私、二度と目覚めなかったと思うと…」




笑顔を浮かべる、香織。







そして無言でアタシを抱き締める、氷室さん。



そうだ、アタシ、高尾さんに刺されたんだ。


カレンさんのこと、何も知らないのにあんな酷いことをいってしまった。


本当に…


何て言えば良いのか。












もうすっかり、あの夢はわすれてしまっていた。

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