東京花魁物語

□捌
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透き通った空気の中。


まだ早朝だからか、ひんやりとした風が通り抜ける。

ずらりと、この店の遊女たちや、おば様、さらには下仕えの人々が全員並んでいた。


ーー名誉ある花魁の身請け。


許さないを見られる最後の姿といっても、過言ではない。
身請けされたら一生、そのひとの妻として生きるのだから。




なまえがゆっくり振り向くも、それぞれ、
期待に満ちた顔、悲しみに溢れた顔、
慈愛を帯びた顔など様々で、ふっとなまえは微笑んだ。


ずき、と胸が痛む。


きっと征十郎は間に合わない。




扇子を広げて顔を隠した。
こんな顔、見せられたものじゃない。











わっ、という歓声が周りから湧き上がる。
顔を上げれば、氷室さんの乗ったリムジンほどの高級車がみえた。
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