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□love
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蛇「名無しさん!大好きだぜ。
俺から離れんなよ?」

これは私が一番幸せだった時の記憶。

蛇「名無しさん、ごめんな。
守ってやれなくて…さよなら。」

これは私と蛇骨が最後に話した時の…
一番悲しい記憶。



私が七人隊と出会ったのは3年前。
首領である蛮骨に家事係として
雇われてから、
一緒に暮らし始めたのだ。

そのとき蛇骨は私のことを
避けつづけていた。
顔すらも合わせない日もあった。
女が嫌いな蛇骨にとって
私と暮らすことはとても
いやなことだったのだろう。

しかし一緒にごはんを食べるうちに、
家事を手伝ってくれるうちに、
私は蛇骨に惹かれていった。
叶うはずのない恋。
一生心に秘めておこうと思っていた。
なぜなら、女嫌いな蛇骨が
私なんかを好きになってくれるだなんて
思ってもみなかったのだから。

そんなある日、
蛇骨の気持ちが、
蛇骨の私への気持ちが
わかる日がきたのだ。


それは私が1人で川に水を汲みに行っていたときのこと。
私は野盗に絡まれてしまったのだ。

私「あ、あの…帰してください…。」
野「あ?女、お前誰に口聞いてんだ?殺すぞ」

うぅぅ…泣きそう…怖いよ…
…そういえば…蛮骨が言ってたな、
蛇骨が女嫌いな理由。
『弱い』からだ。
それを聞いてから私は
強くなろうと思った。
…大丈夫、あんな野盗…。

私「し、しつこいんだよ!!!」
野「…お前いい加減にしろよ!!
そんな死にたいんなら殺してやる!」

ひぃぃぃぃ!!!!!
だめだ、殺される。
私はギュッと目を閉じた。


バタッ


…え?なに??
私はゆっくりと目を開けた。
そこにはさっきまで私を
殺そうとしていた野盗が
気絶して倒れていた。

私「…なん…なんで…?」
私は腰が抜けてその場に
座り込んでしまった。
すると聞き慣れたあの声が聞こえた。

蛇「おい、名無しさん。
大丈夫か??」
私「蛇骨…?え、なんでここに」
蛇「たまたまここの近く通ったら
お前が野盗に絡まれてたから。」
私「じゃ、じゃあすぐに助けてくれたらよかったのに…。」
蛇「お前がどう対処するのか
見たかったんだ。
泣くのか、どうかな。」
私「…泣いたら…弱いもんね。」
蛇「……帰るか。」
私「うん。」

……立てない…。
腰が抜けてまだ動けない…
うわー、こんなとこ蛇骨に
見られたくない…。

蛇「あ?なにしてんだ、
はやく帰るぞ。」
私「あの、先帰ってて!」
蛇「お前…まさか腰抜けて
動けないんじゃ…。」
私「…うん……ごめん…
私結局弱いまんまだなー。
だめだ、私。」

せっかくこらえていた涙も
今、蛇骨の目の前で
流れてきてしまった。
自分の弱さが情けなくて情けなくて、
どうしようもなかったのだ。

蛇「名無しさんは弱くねえよ。
勝手に自分で弱いって決めつけるな。
ほら泣き止めよ!」

それでも私はなぜか涙を
止めることができなかった。
あぁ、また嫌われるんだな、
と思いながら…。
しかし次の瞬間、
暖かいものが私を包んだ。




蛇骨だ。


蛇骨が私を………抱きしめてる。


私「蛇骨…?」
蛇「俺おかしいなぁ。
女嫌いだったのによ。
お前のこと…好きみてぇだ。
俺が守ってやりたい。
ずっとそばにいてほしいんだ。」
私「うそ…!」

私は最初蛇骨が言ってることを
理解できなかった。
あまりにも…夢のようで。
また涙が止まらなくなった。

蛇「お前泣きすぎ!!
干からびるぞ、泣きすぎて。
…お前は俺のこと好きか?」
私「だって…うれしくて…
ほんとに夢みたいで…。
私も…蛇骨が好き。」

私の涙が止まるまで、
私たちは抱き合っていた。


蛇「帰るか!」
私「うん!」

私たちは手をつなぎながら
住居へ帰った。
帰っている途中に蛇骨が
また言ってくれた。

蛇「名無しさん!大好きだぜ。
俺から離れんなよ?」
私「私も大好き!
絶対に離れないよ。」





この幸せがずっと続くと信じていた。
しかし現実はあまりにも残酷で、
この幸せはすぐに不幸へと
変わってしまったのだ。



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