小説

□君が、 〜前編〜
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真っ暗な心の中、スポットライトは寂しく照らす。



『‥‥だれ?』



ライトの中で涙をためた少年がひとり、俺を見つめている。


君は誰?


やつれた瞳と腫らした瞼。

生気のない顔色に笑顔のない口元。


『君は誰?』


すぐに割れてしまいそうな空気を連れた少年は、光の中で微動だにしなかった。


『僕の心に、何のよう?』


空気の音ひとつしないこの空間で、君の全ては俺の全てを惹きよせた。


『お前が呼んだんだろ』


幸せに飢えた少年は、ぽかんと口をあけた。
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