小説
□君が、 〜後編〜
1ページ/20ページ
『お前、頭おかしいんじゃないの』
物陰から見つめる俺をオンナは笑った。
『あんなドジ、見てたってなんの面白味もないじゃないか』
ぱっつりと切り揃えた前髪の奥で、笑わない瞳が矛盾していた。
『本当に笑えないオマエよりかは見ていてたのしい』
むすっと頬を膨らませたオンナはその場から駆け出して、あの子の前に立った。
『あんた、つまらないのよ』
オンナはあの子の頬を勢いよく叩き、そのまま消えてしまった。
『‥‥‥‥ぁ!』
駆け出した右足が躊躇して、心臓の鼓動が高なった。
行けない…
この気持ちが、収まらなくなってしまう…
あの子は、頬を抑えて涙を堪えていた。