1006 BOOK

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私が5歳とか、そのくらいの時
母親が病気で死んだ、その後を追うように父親が死んだ
兄は生き抜くためと言って、死体に隠れて
あの思い出したくもない町を出た
もう顔も思い出せない

私も兄を見習って、腐臭のする死体に紛れて町を抜け出した
死体処理の町から、近くの森へ逃げて
そこで、悪魔の実を見つけて、藁にもすがる思いで食べた

自分の体が白く変色していく、体力もなくなりだして
死ぬと思った時
目の前に1匹の狐が通りかかって
手を伸ばした

そしたら、目の前の茶色い狐が、真っ白に変わってすぐに死んだ
その分、腕に広がる白いのが減った

これが悪魔の実の力なのかと思って
手あたり次第、動物を触って、白いのが移るように願った

それから15年
数年で止まる心臓は、まだ動いている

街で仕事を見つけて、病院にかかったら
健康体ですと言われたから、病気は完全に治ったと思う

悪魔の実の能力を調べたら
どうやら、私が食べた実は傷や記憶を相手に移すことが出来る能力らしく
相手の記憶を自分に移したり
悪魔の実の能力を少しの間自分に移したりできるらしい
そして、相手の寿命を奪って、自分の寿命を延ばすこともできる
若さを保つこともできる

ほとんど使う事はないけれど


「お使い頼めるかい?」

『うん、何を買ってくればいい?』

「オリーブオイルと、調味料。はいメモ」


メモを受け取って、お金を受け取って
こりゃまた随分買い込むな
視線を店主になげれば、何でも有名な海賊が上陸したらしく
いつ客が来てもいいように準備をしておきたいって事らしい


『行ってきます』

「いってらっしゃい」


Tシャツに短パン、サンダルを履いて街にお使いに出る
どの海賊が来たのか知らないけれど
みんなピリピリしてないから、きっとタチの悪い海賊ではないと思いたい

重いものは後回しにして、調味料を買い込み、オリーブオイルを買う、他にも野菜が安かったから
それも残ったお金で買った


「今日来てる海賊は、ドンキホーテファミリーだってさ」

『ドンキ・・・・・・ホーテ・・・・・・』

「身の丈より長い、長刀を持ってる奴だから、下手に関わるなよ」

『は、い』


袋に買った野菜を詰めてもらって
八百屋のおじさんに挨拶をして、自分がバイトをしてるお店に急ぐ
ざわざわと人が賑わっているのが見えて
例の海賊かなと、足を止めずに
少し離れた場所からみていれば
アザラシ柄の帽子に、確かに身の丈以上の長刀を持つ人がいた

顔までは見えないけれど、すごく細身の人だな
背もすごく高い

足を普段よりゆっくりと動かしながら、観察をしていれば
その視線に気づいたのか
目線があった気がした

ドクリ

心臓が鳴いた
何が原因なのかは知らないけど
勝手に涙が出た
見たこともないし、全然知らない人なのに
なんでか、懐かしい気がした


「お前…」


その人が、そう声を発して
ようやく足が動いて、その場から逃げるように走り出した


「まさか……な…………」




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