1006 BOOK

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店に戻ったら、店主に迎えられたけど
顔色が悪いってことで、開店までの間部屋で休んでいいと言われ
お店を後にする

人通りのない道を選んで、自分の借りている部屋を目指すけれど


「よう」


後ろからかかる声に、ビクリと体が揺れる
ゆっくりと振り返れば、そこには長刀を持つ男


「あの町の生き残りは、俺だけだと思ったんだけどな」


砂利を踏む音が、大きく響いて
男は、1歩、また1歩自分に近づいてくる


「少し確かめさせてもらう」


手を前にだす男に、能力者だと悟り
相手が能力を発動するギリギリと狙って、自分の能力を発動させる
room 円形に広がる、指定範囲に
この先の一言のタイミングを待ち、走りだすのと同時に能力を発動した


「シャンブルズ」


きっと何かが起こる予定だったんだろうけど、おあいにく様
少しの間だけ
能力は私に移ってる
使い方も分らないけど、逃げるには十分な距離もある


「へー、おもしれぇ」


全力疾走でその場から逃げ出して
入り組んだ通路を走る
男が追ってきてる気配はないみたいだけど

ふぅ、と息を吐いて、男の言葉を思いだす
あの町の生き残り それが何をしめしているのか、男は知っていた
もし私があの町の生き残りだと知って
政府や海軍に連絡されたら、私の人生はここで終わりだ
感染しない病、そう何度も伝えても聞く耳を持たない政府へ突き出されたら
そっこう殺される
はやく
逃げないと


「追いかけっこは終わりか?」

『っ!!』


息の1つも乱れていない男が、すぐ後ろにいた


「どんな能力だが知らねぇが、追いかけっこは終わりだ」


room 普段ならもう少し奪える時間が長いけど
この男との力の差が歴然としている結果
能力を奪える時間は
極端に短かった


「シャンブルズ」


能力を奪えるのは、1日に2つ
同じ能力は、1日に1度しか奪えない
ぎゅっと目をつむって、最初に訪れたのは
何かに抱き込まれるように、体を拘束される感覚

着ていたTシャツの首元を、大きく広げられ
左の肩があらわになる


「お前、ナギか」


あの町から逃げ出してから
本当の名前は、誰にも教えていない
なのに、迷いなく自分の本当の名前をこの男は口にした


『な…んで………』


拘束が緩んで、顔を見上げようとした瞬間
視界がブラックアウトした


「生きてたんだな、ナギ」

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