1006 BOOK

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部屋のクローゼットを開ければ、捨てるほどの洋服
靴、鞄、アクセサリーが並んでいて
スカートがほとんどの中から、ズボンを見つけ出して
変なマークのパーカーを着た
足は無難にスニーカー
鞄をどうしようか迷ったけれど、電伝虫もなければ、財布もないから
鞄はもたなくていっか


「用意できたか?」

『はい』

「その敬語さえなければ、満点あげてやるのにな」


そんな事言っても無理なものは無理だ
兄だとしても、記憶の中のぼんやりした兄は
10歳そこらで、こんな長身の極悪面じゃない

豪邸を出て、少し歩けば
案外にぎわっている街に出た
港は、だいぶ先に見えるけれど、走って20分ってところかな?

日用品の買い出しをして
捨てるほどあるのに、さらに服を買うという男を無理やり制止して
動きやすい服を、数着だけ買ってもらった
あとは、アクセサリーなどを見るらしいけど、興味はない
髪をまとめるゴムとかがあればいい


「ほぉ、とうとうこの街を出るのか」

「うん、お金もたまったし、明日か明後日の便でね」

「そりゃ寂しくなるな」


茶色い長い髪の女のひと、旅人かなんかだと思う
あの人、利用できるかもしれない
名前は、さっきお店の人が言ってたし


「ナギ、あの店で適当に買ってこい。最低でも10から20着は買えよ?」


いるだろ?下着
ぽんと、持ったこともない大金を渡されて
こんないらない!と帰そうとしても、持っていろと言われたから
逃走費用にまわさせてもらう



買い物が終わって、疲れたから少し寝る
なんとも普通な言い訳をして
意識を町へ飛ばす
見たことがあって、名前がわかっていれば
その人の意識に自分の意識を飛ばせるのは便利な能力だ
しかも丁度その人は、船のチケットの購入場所にいた


「明日の夜の便、大人1枚。一番安い場所でいいよ」

「一番安いって言ったら、大部屋で雑魚寝だぜ?」

「大丈夫大丈夫・・・・・・・・・・、あー、ごめん。チケット大人2枚で頼むわ、レイン・ブーケって友達がギリギリで乗船するだろうから、船の人にも言っておいてくれるとありがたい。お金は今二人分払ってくから」


うまい具合に、話の途中で乗り移れたおかげで
私の分のチケットの入手は出来た
明日の夜、9時出発の便
行く先も分からないけれど、ここにいるよりかはマシな場所だといいな
意識を自分の体に戻して、寝返りをうつ

本当は男の能力、オペオペの実の力も練習しておきたいところだけど
そんな暇はないし
感づかれたら、それこそその場でゲームオーバーだ
隠れてやるのではなく
ちゃんと
追いかけられないようにしないと
身体能力の差で追いつかれちゃう

本音を言えば、男が兄かどうか
ちゃんと記憶を見て、調べたいと思うし
本当に兄なら、こんなうれしい事はないけれど
海賊と一緒に暮らすなんて、無理だし

嫌なことを思い出して、お腹が痛む気がした
思い出したくもないけれど、忘れることなんかできない
両手をそっとお腹に添えて
ベットの上で小さく丸まって
目を閉じた




『(あんな思いは、もうしたくない)』








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