1006 BOOK

□09
1ページ/1ページ

目が開いて、まず最初に思ったのは
戻ってきたんだな ということと、自分はこの先どうなるんだろうという不安
もうすでに夜は終わっていて、太陽の光が室内に柔らかく差し込んでいる


「家出とは、少しお転婆になったんじゃないか?」


横を見れば、椅子に男が座っていて
呼んでいた本をぱたりと閉じた


『あなたは、本当に兄なの?』

「何度も言ってるだろ」


ベットに座る男は、顔にかかる髪をゆっくりと後ろへなでつけた
俺の記憶でも、見てみればいい
そういって近づく男は、コツントおでこを当てた


「見ないのか?」

『なんで・・・・・』

「お前の食べた悪魔の実を調べた」


ほら、見ないのか?
そう言われても、自分自身、記憶を見るか見ないかまだ決まってないんだ
見て、違う人なら、あぁやっぱりと納得できるけど
本当の兄なら、その先がどう考えても答えが出なかった


「この前、紅茶をいれてた時は、見たのにな」

『分ってたの?』

「お前は気づいてねぇかもしれねぇが、能力を使う時、お前瞳の色が変わる」


なんてこった、今まで15年間気づかなかった
わざわざ、鏡の前で能力をつかったりしなかったし
むしろ、ほとんどその能力は使っていないから
当然といえば当然

そろそろと、両手を男の顔に持って行って
そのまま目を閉じる
昔の記憶だけ、それ以外は海賊というほどだから
血なまぐさい映像しか出てこないかもしれない


「― 父様!生まれた!? ―」

「― わぁ、女の子だ ―」

「― ナギ!ナギ!俺が守ってあげるから ―」

「― ラミ!ナギ!喧嘩するな! ―」

「― ナギ母様がケーキ焼いたって ―」

「― ナギが作ったのか?うまい!母様よりうまいよ ―」

「― ラミは、父様が絶対治してくれる!だから泣くな ―」

「― ナギ、俺は何が何でも生き抜く ―」


涙がボロボロこぼれた
頬を包んでいた手を放して、首にそっと巻き付け
ぎゅうと抱きしめる
見えた記憶は、私が生まれて喜ぶ兄で
私を守ると決めた兄で
ラミと喧嘩をして、叱ってる兄で
私の作ったお菓子を、美味しいと食べてくれる兄で
生き抜くと、私を置いて行った兄だった


「毎日後悔した、たった一人の妹を残して町を出たことを」

「だから、お前をみた瞬間、今度は絶対守ると決めた」

「もう二度と、離れないと決めた」


ごめん、ごめんな
自分が生き抜くために、お前をあの町に残して来ちまった
ありがとう
嫌な思いをしてまで、必死で生き抜いてくれて
自分で命を絶たないでくれて


『兄様っ』

「ローでいい。兄らしいことなんて何もしてないからな」

『ローっ…』

「ほら泣きやめ、兎の目みたいに真っ赤になっちまう」

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ