1006 BOOK

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誰の趣味かわからないけれど
ドフィが4人は同時に入れそうなほど大きな浴槽に
何十人もいっぺんに体が洗えそうなほど、広々した空間が広がっている
泡の中をすいすい進むのは、白クマのおもちゃで
ついつい、目に入って湯船に浮かべてしまった


『可愛いけど、誰の趣味だろう?』


ドフィもローもコラさんも、こんな乙女趣味なのかな?
そう考えていたら
ガラリと扉が開いて
湯気で見えねぇ、見えねぇといいなが、フラフラこっちに来る
大柄の影
この声は


『コラさん?』

「え?」


呼びかけに反応した影は、慌てて出ていこうとして
なぜか湯船に頭から落っこちた
お風呂で溺死って、こーゆう感じなんだろうな
冷静な思考回路が働いて、コラさんの体引き上げ
顔を湯船から出してあげた


『コラさん……今、声……』

「え?あっ!!いや、これは!あーあれだ、ほらあれ!!」


慌てて、自分の口をふさぐコラさん
きっと、何か事情があるんだろうから、その先は聞かないでおく


『私とコラさんの秘密ね』

「そ、そうだな」


お風呂で、お互い裸のままで
こんな冷静でいいんだろうか?
これ、ローに見つかったら怒られるのかな?

白クマのゼンマイを巻いて
腕がぐるぐる回って、コラさんの方へ泳がせて
今度はコラさんが、ゼンマイをまいて
白くまは、私のもとへ戻ってくる


『ねぇ、ローはどうやって大人になった?』

『きっと私より、大変な思いをしてきたんだと思うんだけど』


湯気で、ぼやぼやしてるから
視界には、コラさんの影しか映っていないけど
浴室は、声はすごくよく響く


「生意気なガキだったよ。自分の命の長さを知ってるからこそ、無謀で。世界の全部ぶっ潰すって」

「だけど、必死に生きる姿に、俺もドフィもなんか惹かれて、俺らが持ってるモン全部突っ込んで、生きる可能性を探してた」

「オペオペの実を見つけた時は、無理やりあいつの口に突っ込んで、すげー文句言われた」

「病気も治って、俺もドフィも海賊だから、そのまんま海賊になっちまって、今のあいつになっちまった」

「本当はもっと、普通に幸せになる道を、選ばしてやりたかったんだけどな」


しみじみ言う声は、すごく優しさを含んでいて
ローは幸せ者なんだと思った
病気の事も理解してくれて、治そうと必死になってくれて
私も、そんな人と一緒に大人になりたかった


「ナギはどうだ?」

『私は一人だったよ、病気の事も話したこともないし、本当の名前も教えたことないし、自分一人でどうにかしなくちゃダメで、頼れる人なんていなくて、生ごみでもなんでも食べた』

『死んでもいいかなって、何度も思ったけど、父様と母様とラミに怒られそうだからやめた』

『食べ物や、お金も盗んだこともある』


こんな風に生きてたって、何もないかもしれないって
ずっと考えながら、もう1日、もう1日だけって生きてきた
思い出してたら、その時の惨めな思いまで思い出して
お湯の中で膝を抱えた

ザブザブとお湯の音がして
ぎゅうと抱きしめられた、濡れた手で頭をなでるから
髪がびしょびしょだけど


「がんばったな」


涙があふれた
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