BOOK 弱虫ペダ2

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「凪チャン、かかとでペダル踏んで」

『荒北先輩、これ、た、倒れません?』

「新開のデブが乗っても倒れねーんだから、心配いらないヨ」


自転車を専用の器具で固定して、おそるおそる乗ってみる
右足のかかとでペダルを一番下まで踏むと、膝が少しだけ曲がる


「もうチョット上げるかァ」


何回か、乗ったり降りたりして、調整は終わり
荒北先輩はサイクルジャージじゃなくて
普通のジャージ姿で、長ズボンの裾を巻き込まないようにマジックテープでとめた


「俺も行こう」

「福チャンが引いてくれるってヨ」

『あ、あの、速いとついていけないので、ゆっくりで』

「あぁ」


福チャン先輩のジャイアントに続いて、自分がビアンキで走り出す
ハンドルが低いけど、クロスバイクも少しだけ前傾姿勢だから
そこまでの違和感はない
後ろからは、車輪の音が聞こえるから
なんとなく安心感はある


「福チャァン!初心者用の平坦コースなら、もうチョット踏んでいい」

「そうか」

『ちょ、ちょ、荒北先輩!』

「凪チャァン!しっかり食いついて行けヨォ!!」


どのくらい走るのかもわからないけど
そんなたくさんは走らないと思うし
チラチラと、後ろを確認しながら走ってくれる福ちゃん先輩
もう、やけくそ!
教えてもらったリアのギアを、1つ上げた


「やるじゃナァイ!!」

『か、肩、腰、めっちゃ痛い……あ、と手首』

「初心者用のコースは平坦、ゆるやかな坂、全20キロのコースだからな、白銀には少しキツかったかもしれん」

「でも、走り切ったんだから、大丈夫だロォ!」


ベンチに座り込む私を、二人は余裕の表情で見下ろしてくる
汗で髪が重いし、メットでさらにぺちゃんこになった髪を
荒北先輩は嬉しそうに、ぐっしゃぐしゃと乱した


「また一緒に走ろうネ」

『はい!』


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