1006 BOOK

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ザクザクと雪を踏む音
シンシンと降る雪に、他の音が飲みこまれて
足先も、指先も、冷たい
懐かしい感じ


『雪、久しぶり』

「俺はそうでもねぇな」

『懐かしいね』

「・・・そうだな」


コートにブーツ、マフラーをぐるぐる巻きにして
雪の中、白い息を吐いて進む
特に町中とかじゃなくて、ただ広い空間を二人で歩く
ニット帽に雪が積もりそうだけど、ローの帽子を見る限り
まだ積もってない、うっすら白くはなってるけれど


『雪兎一緒に作ったね』

「作ったのはナギとラミで、俺はそれを預かる役目」

『でっかい雪だるま作った』


両手を広げて、その大きさを表したけど
そんなデカくねぇだろ と笑われた
子供の私から見れば、そのぐらい大きかった


「手袋は」

『まだいい』


この会話も昔から変わらない
雪で遊ぶ私は、手袋がすきじゃなくて
いつ母様とローに怒られた
真っ赤になって、じんじんし始めて、ようやく手袋をはめる


『ローはそんな薄着で大丈夫?』

「あぁ」

『風邪ひくよ』

「そんな柔じゃねぇよ」

私だけ着ぶくれでモコモコしてるのに
ロングコートを着てるローはすらっとしてる

まだ誰も足を踏み入れてない雪を見つけて
走って、そのまま雪の上に倒れこむ
仰向けに倒れたから、目の前には鈍い灰色の空と降る雪

故郷もこのぐらい雪が降ってた
ラミと一緒に走り回って、こうやって雪の中に埋まって
ずぶ濡れになって、暖炉で温まって


「20歳になっても、まだまだ子供だな」


差し出される手を掴んで、引き起こしてもらえば
コートについた雪を丁寧に払われる

今までは、こんな風にはしゃいでない
もっともっと、周りに気を遣っていたし
もっと生きること自体に必死になってたよ


『兄様がそばにいるから』


無条件に守ってくれる、信じられる存在だから
気をはってなくても、大丈夫な存在だから


『そろそろ船に戻ろうか、ドフィとコラさんが迎えに来ちゃう』

「もう遅いけどな」


ローの後ろに見えた大きな二人
ピンクのモフモフと黒いモフモフは相変わらず健在で
私はピンクのモフモフに走れば
そのまま抱き上げられて、体が冷たいからってコートの内側に入れてくれた

ため息を吐いて近づいてきたローを
コラさんが同じように抱き上げ
暴れるローを、軽々とコートの内側に入れる

本気で逃げれば、ローは軽々とコラさんの腕の中から出られるだろうけど
それをしないのは、本気で嫌がってないせい


コートの中、すごくあったかい





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