1006 BOOK
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女が部屋に入るのと同時に、自分も部屋へ押し入れば
驚いたような表情を見せる
こいつ、俺を知ってるな
『なんで』
「お前は誰だ」
片腕で、簡単に壁に押し付けられる女、こっち側の人間じゃねぇのか
ギリギリと腕を締め上げれば、痛みでか涙が出てる
名前を聞いても、ナギとは違う名前
こいつは見当違いか
投げ出すように腕を放せば
一目散に部屋から逃げだした
チッ、多少の手がかりがあると思ったが
イライラして壁を殴れば、部屋に飾ってあった写真立てが落ちる
いつもなら気にしないソレを、俺は拾い上げた
「なんで、この写真・・・」
割れたガラスの向こう
色褪せてボロボロで、ところどころ汚れているが
間違いなく、親父と、お袋と、ラミ
そして、名前を知らない女の子を抱く俺
なんだっつーんだ
視線を上げた先、ベットの枕元
白クマに、黄色のリボンが結ばれていて
― 名前を付けて、リボンを巻いた日が誕生日なんだって ―
そう俺に教えたのは誰だ
昔から、ぬいぐるみが好きだったから、喜ぶと思って
衝動買いしたんだ
昔から、好きだった
なんで俺がそんな事知ってんだ
喜ぶと思ったって、どこのどいつだ
写真をくりぬくように、記憶を切り取られたようで
そこだけ、思い出せねぇ
「逃がすんじゃなかったな」
もう1度捕まえて、この写真をなんで持ってるか聞くしかねぇ
どこ行きやがった
『なんでローが、この島に…・・・記憶はちゃんと消したはずなのに!』
「おい!お前そっちには今海賊が暴れてんだ!殺されるぞ!」
『え?』
赤い、赤い、血が流れてる
誰の?
力の抜ける体に、震える指先
地面を這うような視界
どうして私は、こうも災難が続くのだろうか
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