BOOK 高尾誠凛

□ぬくもりに呟く
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日曜日、珍しく部活が休みになって
両親は二人で買い物
妹は、友達と遊びに行ってて
これはもう、凪を呼ぶしかない!
御誘いメールを送ってみた


『おじゃまします』

「誰もいないから、あんま緊張すんなよ」


最寄りの駅まで迎えにいって
その帰り、どこかでお昼食べようとしたら
せっかく家でゆっくりできるなら…と
家で食べることになった

凪の飯、ちゃんと食うのも初めてだな

内心めっちゃ浮かれてる自分に、心底凪ちゃんが好きなんだと再確認した


『じゃあ、台所かりるね』

「俺も一緒にやるよ。何すればいーい?」


じゃあ・・・
二人で台所に並んで料理して
二人で向かい合って飯食って
片付けは、二人分なら一人で平気というから
凪に任せた
いい嫁になれる、俺が保障する


「部屋、行こうぜ」


その一言で、少しだけ凪の体が固まったのは
見て見ぬふりだ
飲み物と、お菓子を持って部屋に上がり
ベットを背に座れば
その横に、ちょこんと座る凪

あーめっちゃ可愛い。マジで可愛い


「こっちこいよ」

『ちょっ』


ぐいっと引き寄せて、足の間に座らせて
後ろから抱き締める
表情が見えないから、どんな顔してるかわかんねぇけど
耳が赤いから、リンゴみたいに赤い顔してるんだと思う


「あー癒されるわ」

『最近お疲れ気味だもんね』

「練習量、やっぱ半端ねーわ」


中学と高校、やってる事はさほど変わらねぇけど
やる量は断然高校の方がきつい
でも、泣きごと言う暇があるなら
足動かして、パス回して
1回でも多く、シュートを決める方がいい

腕の中の凪が、ごそごそと体の向きを変え
ぎゅっと、俺に抱きついてきた
並んで歩いても小さいけど
こうして座って抱きしめても、やっぱ小せぇな


「悪いな。こんな時にしか会えなくて。もっと構ってやりてぇけど」

『十分だよ。こうして休みの日一緒に入れるし。寂しくないといえばウソになるけど、でも和成のバスケ応援したい』


下から見上げられて、その上目遣いに正直照れる
なんでこいつは、こーゆー言ってほしい事を言ってくれるんだ
そっと顔を手で包んで
おでこに、まぶたに、頬に、唇にキスを降らす

流石にこれ以上は、俺の我慢も限界を迎えるから
何もしねぇけど
首筋に赤い印を、ひとつだけ残した


「俺のものって印」

『もうとっくに和成のものなのにね』


でも嬉しいよ
こいつ、俺の理性を試してたり?
はぁ〜もうやってらんねぇわ…


ノートPCの電源を入れて、映画のDVDをセットする
腹いっぱいだし、めっちゃいい天気だし
腕の中には、愛しの彼女だし
ヤバ、寝るなっつーのが無理だよな


PCを乗せたテーブルをベットの方に引きよせ
画面の角度を調整
凪を抱き上げ、そのままベットに横になる
うわぁ、幸せだ
俺はそのまま意識を手放した



抱きしめながら寝てしまった和成
よっぽど練習で疲れてるんだと思う
まぁ、どこの学校も一緒だけど
それでも、家に呼んでくれて
一緒にいてくれるのが、すごく嬉しかった

飽きないようにつけてくれたDVDも
とっくに黙り込んでしまって
部屋に聞こえるのは、和成の寝息だけ

体の向きを変えて
無防備な体に、ぎゅっと抱きついてみる
無意識に抱きよせてくれるその腕のぬくもりが
心地よくて


『大好き』


聞こえてないだろうけど
そう言わずにはいられなくて
一人でふふっと笑った後
私もそっと瞼を閉じた



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