BOOK 高尾誠凛

□意気込みはジャージを着てから
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― 明日の練習に、差し入れ持ってきてって言ったら、来てくれる? ―

夕方、夜ごはんの支度をしようと、冷蔵庫を漁っていたら
そんなメールが届いた

― いいよ。何がいいかなぁ?レモンのはちみつ漬け?チョコケーキ? ―

― チョコ! ―


朝少しだけ早く起きて、昨日慌てて買いに行ったラッピンググッズにチョコブラウニーを包む
何人いるかわからないけど
最低でも、和成に食べてもらえれば、私は満足だから
7号ケーキを2つほど焼いた
それを持って、最寄りの駅まで行く
駅で待ち合わせで、和成が迎えに来てくれるはずなんだけど……


「遅い」

『ごめんなさい』


緑間くんが立っていました
行くぞと歩きだす緑間くんを慌てて追う
早足でも、少しずつ離れていくのを見て
緑間くんを呼べば、不機嫌そうな表情の後、歩く速度をゆっくりにしてくれた


『ありがとう、緑間くん』

「なんの事か、わからないのだよ」


ふふっ、素直じゃないのだよ
あ、口癖移った
少しだけ話をしながら、秀徳の門をくぐり
体育館に辿りつけば


「凪―――――!!」


といきなり抱きつかれました
わざわざ走って来てくれたことが嬉しくて
私も和成の背中に腕をまわして、ぎゅーっと抱きしめてみた


「もう練習そっちのけで帰りたい!」

『あ、そーゆう事言う子には、チョコケーキはあげないよ?』

「練習がんばります」


敬礼をビシっと決めた和成を、緑間くんは呆れた表情で見て
そのまま3人で他の選手の元へと進む


『あの、差し入れです。お口に合えばいいでうすけど』

「わざわざ悪いな。キャプテンの大坪だ。よろしく」

『あ、よろしくお願いします』


これから練習が始まるみたいで
和成と緑間くんは、更衣室に入って行った


「その大荷物はなんだ?」

『あ、一応ジャージ持ってきたんです。手伝えることあればと思って』


はちみつ色の背の高い人が、私の持ってるバックの中身を指さして
素直に答える
隠してもしょうがないし
見学だけなら、私服で十分だけどね


「マネージャーできんの?」

『一応簡単なことであれば』

「よし!着換えてこい!!」


勢いに押され、ジャージに着替えて
粉末のスポドリと、タオルの場所を教えてもらって
溜まりに溜まっている洗濯ものを、洗濯機につっこんだ


「凪、何でジャージ?」

『はちみつ色の髪の人が』

「宮地先輩が?」

『着替えてこい!って』

「はぁー…あの人は…本当」


うなだれる和成の服の裾を軽く引っ張って
目線が合った時


『邪魔だったら言ってね?』


と控えめに言えば
そのまま抱きしめられた、今日で2回目


「あぁーもう可愛いな!俺をどうしたいわけ?邪魔なわけないし!」


無茶しないで頑張ってよ
そう頭を撫でてくれた
今日1日、秀徳男バス臨時マネージャーとしてがんばります



意気込みはジャージを着てから



宮地先輩、マネージーさせるなんて聞いてないんですけど
彼女をみて決めたからな!
そんな勝手な!!
うるせぇ、轢くぞ!


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