BOOK 高尾誠凛

□後ろからの指示者
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カシ カシン カシ …… カシン


「なぁ凪ちゃん」

『んー?』

「それ、どうしたの?」

『友達がくれたの』


和成の部屋で
和成がベットに背中を預け、床に座り込み
その足の間、クッションに腰を落ち着けている私
和成の腕はおなかにまわされていて
二人して、まったりモード

カシン カシン と音を立てているものは
5×5の可動式のパズル
子供のころ1回は必ずやったことがあるものだけれど


『これ、苦手でね』

「うん、それは見てれば分かるわ」


頭1つ分高い和成は
私の手元も丸見えで、さっきからクスクス笑っては
頭を撫でる
まるで、子供の様子を見守っている、保護者みたい

絵柄が全然合わない
下が揃えば、上が合わないし
真ん中だけ合って、左右が逆とか
後ろから、逆に器用だわww
なんて声も聞こえてくる
きっとこの場に緑間くんとかがいたら


『こんな物もできないのか、馬鹿め。とか言われそう…』

「あ、真ちゃん?確かに言ってそうだわ」


ほら、もうちょい頑張れって
その声に、また眼の前のパズルに集中する
カシン カシ カシ
何度となく回しているうちに、絵柄も分らなくなって
目が回る
はぁー とため息を吐いた


「あれぇ?降参?」


笑う和成の手にパズルを持たせて


『和成やってみて』


見上げたまま言えば
にやり と笑った和成が
不覚にも、かっこよく見えた

目の前でどんどん絵柄がそろっていく
パズルを動かす指は止まる事無く
たまに、行ったり来たりを繰り返して


「ほい、完成」


数分後、絵柄はすべてそろってしまって
再び和成を見上げれば
楽しそうに目を細める和成
むっとなって、また自分でパズルを崩して
再挑戦
クックッと笑う和成は
腕を体に回し
文句も言わず、私の指先を見ている
そして数10分たって


『和成…やっぱり出来ない〜〜』

「ははっ、だろうと思った」

『むぅ』

「そう拗ねるなって、ほら一緒にやろ?」


それは、そのままで
こっちのを、左に
そうそう、それは右周りでぐるぐるして…

和成の言葉と、指先でヒントをもらって
少しずつ絵柄が揃う
あと少しという時に


「あとは、一人でも出来るんじゃねーの?」

『がんばる』

最後だけノ―ヒントでカシカシ動かせば
数分後、ようやく絵柄はそろった

パズルを掲げ、和成にできた!と見上げれば
良くできました!
って頭を撫でてくれる


「でも、凪本当にこれ苦手なんだな」

『それにしても、和成は早すぎでしょ』

「真ちゃんとかもっと早そうだな〜今度やらせてみようぜ」

『…やだ』

「凪?」


だって、緑間くんはきっと和成より早く完成させそう
そうなったら、絶対和成に
だから、貴様は馬鹿だというのだ
って言うでしょ、でもそれより遅いって知ったら
絶対馬鹿にされるし、緑間くんは女の子でも容赦なく
貴様 とか言いそうだし


「流石に真ちゃんでも、女の子にはキツイ事いわねーって」

『な、んで…』

「顔に出すぎ。考えすぎだぜ?」


ふにふに と頬をつつく和成に
思ってた事を見透かされて
相変わらずハイスペックな彼氏様だな
とじっと和成を見上げる
両手で、和成の頬を包めば
嬉しそうに笑う和成に
私まで笑ってしまった




「ぶはっ、凪そろそろ諦めろって」

『いや、一人でできる』

「もう1時間たってるぜ?」

『もう少しだけ』

「そろそろ、俺も構えって」



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