BOOK 花ことばシリーズ

□4月9日
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俺には幼馴染がいる
性別はかろうじて女、身長は高くないむしろチビ
頭も悪い。この前のテストの結果は半分よりだいぶ下
そんな奴が、なぜ俺の幼馴染なのか
そんなのは家が隣同士で、親同士の仲が良く
男なのに、喧嘩の1つもせず上品にそだった俺と
女なのに、男子と喧嘩をし、男勝り
本当にただの腐れ縁だ


『おい赤司。てめぇ言いすぎだろ』

「俺は本当の事しか話してない」


短いスカートなのに、俺の座っている椅子をガンッと蹴りをいれる
奇麗な顔をしているのに、本当に残念だ
少しの間黙っていろ。いや、むしろ一生黙っていろ
そうすれば、見た目だけは上品に見えなくもない


「スカートの中身、見えるぞ」

『きゃーとか言っときゃいいか?多少見えたところで何も減らねぇよ』


不敵に笑って、前の空席に勝手に座る
足を組み、下から見上げる凪は本当に黙っていれば文句はない


「その頬の傷はどうした」

『んぁ?あぁこれ。女子が持ってたハサミにぶつかった』

「顔に傷を作るなんて、さすが凪だな」

『これでも上手く避けたんだよ』


たぶん俺の取り巻きの誰かだな
俺の周りにいる女子は、桃井か凪ぐらい
桃井は女子の中の女子、見た目も中身も、戦い方も
だが、この馬鹿女は、見た目は桃井以上の女子、中身は男子顔負け
戦いかたはヤンキーときたら、誰もが思うだろう

赤司の隣はふさわしくない


「それで、その女子は?」

『何だ今日はずいぶん気になるみてーじゃん?』

「いいから答えろ」

『足で壁ドンして、黙らせてきた』


ほら見ろ、何だその黙らせ方
そんなやり方じゃ、また次似たような事になるじゃないか
やるなら、次などないほどに
徹底的にやらなければ意味など皆無だ

前の席のやつが戻って来て、凪は大人しく席を譲る
悪い、ちょっと借りたわ
じゃあな、赤司

そう言って、凪は自分のクラスに戻っていく
その後ろ姿を見送って
持って来ていた小説を読み始めれば
クラスの女子が、小さな声で話し始める


さっき来てた凪さん、絡まれた子助けたんだって
見た見た!めっちゃかっこよかった!
何か飾らない感じで、いいよね!今度話しかけてみよかなぁ


聞こえる声に、集中など出来るはずもなくて
本を開いたまま、その会話に耳を立てる

本当に凪という女は、なぜか女にもてる
まぁ、俺にしたら好都合だからいいけれど
少しだけ複雑な心境だ

だけど、まだだ
まだ、女になどならなくていい
今はありのまま、好きなだけ暴れまわればいい
面倒な害虫駆除をしなくて済む

今の友情ごっこも、わりと気に入っている
もう少し先、嫌でもあいつは大人しくなる以外の選択肢がなくなるんだ
今のうちだけは、好きにさせてやる

俺は、あいつを、逃がす気はない
あいつは、俺のもの




今までを友情と偽って
くだらない害虫を薙ぎ払い
優美に育つまで、じっくり待つ

それは、俺の秘密の愛ゆえ



アカシア  『優美 友情 秘密の愛』

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