BOOK 花ことばシリーズ

□4月22日
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コート上の王様
そんな名前をつけられた
傲慢で、自分勝手で、仲間にも怒鳴るような
独りよがりの王様

それが、彼につけられた不名誉な名前だ

傲慢?自分勝手?怒鳴る?独りよがり?
それは、周りが飛雄ほど努力をしないから
周りが、飛雄の才能を妬むから
周りが、飛雄を認めようとしないから


「お前だけが知ってればいい」

『よくないよ、全然よくない』


バレーを全力でやってきて
誰よりも勝利に貪欲で
常に上を目指している飛雄
一番近くで、私が、この目で見てきたんだ

誰もいない先へのトス
それがどんなに怖いものか、私には分からないけれど
ベンチに下げられた瞬間に 思った
誰も、飛雄をちゃんと見てはいなかったんだなぁって

誰か一人でも、最後の最後まで飛雄に食いついてくると思ってたけど
諦めたのは飛雄じゃない
諦めたのは、眼をそらしたのは周りの方だから


「凪は、最後までついて来い」

『当然でしょ。ちゃんと最後まで飛雄を見てるよ』

「高校で、俺はもっと強くなる。誰にも文句を言わせないくらい」

『うん』


早く、早く、高校生になりたい
一緒の高校に行って、ずっと飛雄がコートにいるのを
奇麗なトスを上げるのを
勝ち続けるのを
ちゃんと見ていたい


『ねぇ飛雄』

「何だ?」

『私の王様のイメージはね』


王様のイメージ
誰も寄せ付けない程の雰囲気を持つ
優雅で、品位があって
何より、誰より
強くて
優しい人

飛雄はね、まさにそのイメージ通りだよ


「そんな事言うのは、お前くらいだ」

『嬉しいでしょ』


知ってるよ
黙ったふりして
小さい、聞こえないような声で
あぁ って答えてくれた事


「凪」

『ん?』

「凪」

『なぁに?』

「好きだ」

『飛雄』

「好きだ」

『私も、大好き』



私の王様は
優雅で、品位があって
弱くて、だけど強くて
努力することを怠らない

誰よりも貪欲に勝利を目指す

誰よりも 優しい人




こでまり  『優雅 品位 努力する』

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