BOOK 弱ペダ

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『福ちゃん先輩、どうしたんです?』

「凪は、荒北と喧嘩でもしたのか?」

『あー……この前、もう近づくなって言われちゃいました』


福ちゃん先輩は、無表情で何を考えているか全然分からないけど
意味もなく、声はかけてこない
きっと荒北先輩に、何かあったんだと思うけど
思い当たるフシがない

私がいなくても、荒北先輩の日常で支障はでない


「ここ1週間の荒北のタイムが、過去最低なのは知ってるか?」

『……知らない、です』

「それに凪が関係していると思ってな」


それはない
絶対にない
私ごときが、荒北先輩に影響を及ぼす事なんてない
きっと、体調が悪いとか、どこか調子が悪いとか
そうに決まってる


「ロードに乗っていても、上の空で集中できていない。室内での練習もノルマこそこなしているが、タイムが明らかに落ちている」

『もし、それに私は関係していても、どうすることもできません』


もう、あの人に近づくことすら
出来ないんだから


「そうか、凪ならどうにかできると思ったんだがな」

『すみません』


福ちゃん先輩の横を通り過ぎて
下駄箱で自分の靴に足を突っ込み、何も用事はないけど
急いで家に帰った


『もうヤダ……』


ケータイを握り締め
荒北先輩からのメールがない事も
荒北先輩にメールを送れない事も
全部全部、いやになる


『どうしろってゆーの……』


近づくなって言うなら、ちゃんとしてよ
大事なロードで、タイム落としたりしないでよ
荒北先輩の


『バカ‥…』




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