BOOK 一護妹 

□つかんだままの両手
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緊張する緊張する緊張する
だって檜佐木副隊長の家!


Act 11


定時で仕事を終わらせ、ある程度片付けをして
檜佐木副隊長と買い出しに出る
スーパーなんてあるわけもないから
八百屋に、お肉屋さん、お魚屋さん
お米屋さんの場所も教えてもらって
いざ!副隊長の家!


『おじゃまします』

「そう固くなるなよ」


リビング的な場所に通され、少し待ってろと言われ
隣の部屋に行った檜佐木副隊長
死覇装のままの私は、なんだか仕事の延長のようで
どうしていいかわからないで焦る

テーブルの周りに置かれた座布団の上に座って
とりあえず、部屋全体を眺める
きれいに片づけられた部屋
もっと散らかってるかと思った


「おまたせ」

『あ、はい』


出てきた檜佐木副隊長は、着流し姿で
普段見ない姿に、一瞬心臓がはねた


「悪いな、一人だけ着替えちまって」

『いえ、おかまいなく』


よし!やるか!
と檜佐木副隊長の声


『よろしくお願いします檜佐木副隊長』

「……その、呼び方と敬語やめねぇか?もう仕事モードじゃねぇし」

『じゃあ、檜佐木…さんとか?』

「んー修兵でいいぜ?」

『無理です!呼び捨てっ!しかも下の名前……』

「いいから、これ副隊長命令」

『しょ、職権乱用です!』


言い争うこと数分
結局、修兵さんで落ち着きました
いざ気を取り直して、お料理教室の始まり

お米の炊き方
隠し味、魚のおろし方、お肉を柔らかく焼く方法
なんでこんなに手際がいいの!ってほど
修兵さんは料理上手


「まぁざっとこんなもんだろ」

『凄すぎですよ!』

「でも、この前の飲み会の時の柘榴の料理も美味かったろ」

『私なんて全然』


二人向かい合って、修兵さんの作った料理を食べる
修兵さんはお酒を飲みながらだけど
お肉もお魚もどれも美味しくて
もう本当に


『いつでも嫁に行けますよ』

「ぶっ、嫁って…」

『もしくは、お母さんと呼びたいです』

「頼むからやめてくれ」


お酒を煽りながら、ゆっくりご飯を食べ
私も少しだけお酒を頂きながら
いつの間にか、たくさんあったおかずも空になって
片付けようとお皿をまとめ、台所に持っていく
手伝おうと起き上がる修兵さんに


『今日のお礼に私が洗いますから』


そう言ってスポンジを手にとった
二人分のお皿はすぐ洗い終わって
一人で飲んでいた修兵さんの向いに戻ってきた


「おつかれ、ありがとな」


おちょこにお酒を注ぎ、それを渡される
何でも、とっておきの美味しいお酒みたいで
いいから飲んでみろと言われて
舌先で舐めるように少しだけ飲んだ


『きつ…』


もう味がどうとかではなく
きついアルコールの味に
舌の焼けるような感覚
せき込むまではいかないが、大分強いお酒
それを平然と飲む修兵さんは楽しそうに
やっぱ飲めねぇよな
と笑っていた


「甘い酒なら、柘榴でも飲めるだろ?」

『いえ、でもお酒は・・・』

「一人で飲むのもつまんねぇんだ」


氷の入ったグラスと、瓶を持ってきて
それをグラスの中に入れた
広がる香


『梅酒』

「ロックだから、ゆっくり飲め」


一口飲めば、口内に広がる梅の香りと
かすかに感じるお酒の味
この程度なら
と少しづつ、口に運んだ

でも、それがいけなかった


いつの間にか寝てしまったみたいで
布団の感覚に、結局泊まってしまって迷惑をかけたなぁ
なんて思いながら
あったかい何かにすり寄った
ぎゅっと抱きしめれば、そのあったかい何かに包まれて
何だか安心する
こんな布団があったら、お給料でてすぐ買いに行こう

そっと目を開け
視界に飛び込んできたのは、男性物の着流し
ってことは…


「起きたか?」

『あい…?』

「ぷっ、まだ起きるには早いから、もう少し寝てろ」



背中をとんとんされ、今覚醒したばかりの脳が
また沈んでいく
ただ修兵さんの着流し



――つかんだままの両手――



「(やべぇ、どうしよう。まだ起きるなよ柘榴)」

「(今起きたら、いろいろやべぇんだ。だから大人しくもう少しだけ寝ててくれ)」



End

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