参ろうか

□佐武
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佐武虎若




来週、中学最後の試合がある僕らは、なかなか自分たちの欠点を直せずにいた。それを感じ取った監督が、今日の練習を午前中で終わらせて、午後は気分転換することになった。いきなり予定があいたものだから、みんな何にもすることがなく、仕方ないし何かしらあるだろうということで、僕らは駅前までやってきたわけだ。
やはり、平日とはいえ夏休み。人は多いし、多分同年代くらいのやつらが私服でうろついている。
僕らはユニフォームのまま。

まあ、とりあえずゲーセンに行こうかな、と皆で話し合い、ゲーセンを目指すことにした。



駅の階段を降り、


横断歩道を渡り、



右に、







曲がっ、……





「…………?」


なにか、ひどく僕の足を止める違和感を感じて、後ろを振り返ると、僕と同じようにこちらを振り返る同い年くらいのやつがいた。

たまたま目があってしまったから、見つめあってしまっているけど普段ならあまり、関わりたくないタイプ。
ああ、『ガンとばしてんじゃねえよ』とか絡まれたらどうしよう、とか考えながら、まばたきをして、もう一度、そいつを頭から足まで、なんとなく視線を移した。




あれ、?








一瞬、僕の中で全身の血の流れが変わったように感じた。




そいつは、白いワイシャツを着て、青い七分丈のパンツをはき、髪はワックスで整えていて、ピアスが開いていて後ろのポケットにはブランドの財布がチェーンで繋がれていた。片耳に黒いイヤホンがはめられ、手には蛍光色のカバーがついたスマートフォン。
いかにもやんちゃしてそうな、僕とは絶対関わることのないタイプの人間、


の、はずなのに


なんだか、僕は彼を知っているような気がした。








「佐武、……虎若」





彼の口は小さくそう動いた。

駅前の喧騒に紛れているのに、なぜだか僕にははっきりと聞き取れた。

僕の、名前



今度はきちんと彼にむきなおり、また、目を見ると、何か懐かしいような、暖かいなにかが流れ込んできて、








「おーーい!!佐武ー?」






名字をよばれて、はっとして振り返るとチームメイトたちが心配そうにこちらを見ていた。


「知り合いかー?」

「え……、あ、あぁ!……先、行っててくれ!」

「おーう!後で電話しろよー!」




先に行った仲間たちの背中を見送ってから彼にまた向き直る。


そして、

僕は、頭にふと浮かんだ名前の文字羅列を声に出してなぞった。









「加藤、団蔵、」













我ながら、震えていて、尚且つ、泣きそうな情けない声だったと思う。

しかし、彼はそんな情けない僕をしっているから、太陽のごとく、歯を見せて笑って見せてくれた。





一心不乱で僕たちは駆け寄り、
何百年かブリの再開を果たした訳だった。




「久しぶりだな、団蔵。会いたかったぞ、」




















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