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□月輝夜・序
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仲間たちの悲鳴
肉が切り裂かれる音
真っ赤な鮮血……鉄の匂い
亡骸を踏みつけ、その中に佇む男の笑い声
半分奪われた視界、それすらぼやけて、はっきりとは見えない。
己の血か、仲間の血か……
骨も何本か折れているのだろう。湿った地面に横たわったまま、起き上がれず
ただただ、男を睨みつける。
それに気づいた男が、近づく。
一歩踏み出すごとに、先程まで仲間であったはずの肉塊が、不快な音を立てて踏みつけられていく。
『ほぅ、まだ生きてたか……』
本当に面白いというふうに、口の端を釣り上げて笑う。
男の指先に灯った魔術の火が、転がる肉塊に移り、周りが一気に熱に包まれた。
『ここから生き残れたら、復讐しにでもくるといい』
無理だろうがな。
――来たところで、むざむざ殺されてやる義理もないが。
あざ笑う男。
足音が遠のく。
人肉が焼ける異臭に呼吸もままならず、意識が暗転する間際
立ち去る男の腕に見えた荊棘の刺青―――