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□頭痛
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夕日が岩鳶高校のプールをオレンジ色に染める頃、2人の少年は電車に乗っていた。
「うぁ〜…つっかれたぁ〜…。」
「渚くん、重いです…僕に寄りかからないでください…。」
部活が終わり、くたくたになった体はだらりと力が抜けて電車に揺られる。
そして、その電車の規則的な揺れは2人を眠りに誘うには十分であった。
「…ん、んぅぅ…。えっ!あれぇっ!?」
「…ふあぁ〜…。どうしたんですか?渚くん…。」
「何寝ぼけてるの、怜ちゃん!ここどこ!?」
気が付くと窓の外は真っ暗で、見た事のない場所が広がっていた。
「…これは…、随分盛大に乗り過ごしてしまいましたね…。」
「う、うん…とりあえず反対方向の電車に乗り換えよっか。」
2人は駅の上の階段を登り反対方向のホームに向かった。
「えーっと、次の電車は…」
「うぁ、特急電車しかなぁ〜い…。」
渚が降りる最寄駅は普通電車しか止まらない小さな駅で、現在2人がいる場所からかなり離れているため、普通電車の運行は終わってしまっていた。
「んん〜、特急で行けるとこまで行ってあとは歩くしかないかぁ…。」
普通なら歩いて帰ろうなんて思わない程の距離があったが仕方ない、と渚が腹を括ろうとした時、怜が口を開いた。
「渚くん…今日はもう遅いですし、あの距離を歩くのはあぶないですから…その、僕の家に…泊まりに来ませんか…?」
渚はポカンと口を開けた。
(…確かに怜ちゃんの最寄駅は特急電車の止まる大きな駅だけど…お泊りって…っ!あんな事やこんな事出来ちゃうんだよ!?いいの怜ちゃん!?)
頭の中であれやこれやと思考をぐるぐると回していると、怜が渚の顔を覗き込んだ。
「あ、あの…渚く…」
「行く!!」
「え、あの…」
「本当にいいの、怜ちゃん!?」
「あ、はい…。渚くんが良いのなら僕の家は大丈夫ですよ。今日はどうせ親もいないですし…。」
「っ!……怜ちゃんって警戒心ってものがないの…?」
「はい?何か言いましたか?渚くん。」
「…ううん、何でもないよ!わーい、怜ちゃんちにお泊りだー!」
渚はわざとあざとい笑みをこぼした。もちろんその真意を怜は知る由も無かった。
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