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□真琴の誕生日!
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『11月16日 午後11時40分』





「ふぁ…今日の練習、なんかいつもよりキツかったなぁ…。眠い…。」




休日練習。学校の授業がない分より多くの時間を水泳に費やせる。


体力に自信のある自分ですらクタクタになってしまう練習を、ハルは難なくこなす。


ハルはつくづく水が好きなんだなぁ…と、ベッドに横たわりながら当たり前の事をぼんやり考えた。








「pululululu…」


「ん…誰…?」


眠りに着いてさほど経たないうちに、携帯の着信音で俺は目が覚めた。



「はい…も、もしもし…?」


『あ、悪い、真琴。起こしたか?』


「あぁ…ハル。いや、いいよ。寝てからそんなに経ってないし…。ハルこそこんな時間にどうしたの?」


『どうしたのってお前…。はぁ…今日、何日だ?』


「え、今日?…えっと、日付け変わってるから…17日?……あ!」


『真琴、誕生日おめでとう。』



じんわりと心に広がるハルの声。

ただ、おめでとうと言われる事がこんなに満たされるなんて。




「…うん、ありがと、ハル。」


目のふちに滲んだ水分を人差し指で拭い取り、感謝が伝わるように大切に言葉を紡いだ。




『それで真琴、今日空いてるか?』


「今日?空いてるけど…。」


『そうか。それなら俺の家に10時に来い。』


「へ?」


『じゃあな。

ガチャッ、ツー、ツー、ツー…』



普段、明確に約束をして会う事はほとんどない。だからハルから誘われたのは素直に嬉しかった。

だが、その内容を一切言わず、ハルは一方的に電話を切ってしまった。


「え、えぇ?」




ぽかんと画面を見つめる。


祝いの言葉と、誘いを受けた嬉しさに浸る暇なく、疑問に頭を傾けたまま、俺は眠りにつかざるを得なかったのだった。










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