アオイユメ
□紺色の夢
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周りが騒がしい。女の子の声が聞こえる。何だろう?
意識が浮上を始める。
「ハンコック、どこに行ったにょー!?」
「にょんばあ……。人が倒れておるのじゃ」
「ほぅ、どれどれ……。どうやらハンコック達と同じ様に逃げてきたようだね。私が運ぼう」
「レイリー…。そんなに沢山の奴隷を匿ったりして、大丈夫なの?」
「なぁに、三人も四人も変わらんよ」
初めて感じる温もりに、体ではなく、心が暖められたような気がした。
そして私の意識は、再び深い暗闇の中に沈んで行った。
私の意識が回復したのは、それから暫くの時が経過してからだったようだ。
体の節々に痛みはあるけれど、前に鞭で打たれた時に比べれば大分楽だ。ああ、そんな事より、早く起きなきゃ。
遅れる訳にはいかない。何をされるか解ったもんじゃな……ここは、どこ?
こんな状態になってから、漸く気付く。見知らぬ部屋、窓もある。
窓の景色から察するに一階ではない。部屋の中を歩き回っていると、知らない足音が聞こえてきて、身を固くした。
「目覚めたみたいね」
現れたのは短めの黒髪女性で、体は細い。手にしていたお盆を私に差し出すと、当然のように煙草をくわえた。
私はお盆を受けとると、その場に立ち尽くした。それを見て女性は階段を登りきった辺りの壁に寄りかかりながら、口を開いた。
「そこのベッドに座って、それ食べな」
言われるままにベッドに戻り腰掛けると、お盆を見た。お盆にはスープとパンが乗っている。
逆らう概念のない私は、それを素直に口に運ぶ。スープはコンソメ味で、暖かく優しい味がした。
「食べたらレイさんのところに行きなね」
「レイさん?」
鸚鵡返しに言えば女性は階段を一歩降りたところで立ち止まり、振り向いた。
「……後で説明するから、食べ終わったら降りてきなよ」
「はい」
返事をしてからその後ろ姿を見送り、姿が見えなくなったのを確認してから続きを食べ始めた。
美味しい……。
何故だか解らないけど、涙が溢れて来そうになった。それは、許されないことなのに。
涙を抑え込み、なんとか食べ終わらせた。
私はお盆を持ち、ふらふらとした足取りで階段を降りていった。下に到着すると、先ほどの女性の後ろ姿が見えた。
お盆を返そすため、声をかけようとしたが、彼女はそれより早く振り向きお盆を受け取ってくれた。
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