短編
□扉間×男夢主
1ページ/1ページ
「ねぇ、扉間様」
「..........」
このやり取りを初めてからもう既に30分は経っていると思うの。
話しかけている相手は巻物に夢中過ぎてアタシの声に気付いてないみたいで...さっきから無言ばかりだった。
はぁ....と小さく溜息を付きながら目線を扉間様から窓の方へと向ける。
その目に映るのは青い空の中にふわふわしていて柔らかな真っ白い雲、あぁ...今日は絶好のお出掛け日和じゃない、折角の休日なのにこの男と言ったら...。そしてまた再び扉間様の方へと視線を向けると相変わらず静かに巻物に目を向けていた。
椿は反応もせず相変わらずな相手の態度にカチンと来たのか、今度は扉間の肩に手を置いてくいっと自分の方へと力強く引き寄せた。
「......さっきからなんだ」
「ねぇ、折角のお休みなんだから少しお出掛けしない?」
「俺は今これを読んでいるんだ、出掛けている暇はない」
そう言うと再び巻物に目線を戻してしまった。
あーあー!!そうですか!!そうですか!!!そんなにこの巻物の方が大事なんですか!!もう怒ったわ、最終手段を使っちゃいましょ。
先ほどの態度に今度こそ怒った椿は、扉間の頬を両手で包み込み、ぐいっと自分の方へと向けた。
「はぁ....今度はなん....っ!」
がぶり....そう効果音の付きそうな勢いで椿は扉間の顎に噛み付いた。
椿を離そうと身を引こうとしても椿がそれを許す筈もなく、両頬を包んで居た手は扉間の後頭部へと移動し、意地でも離さないと言うようにがっしりとしがみついた。
扉間と言うとそんな椿の様子に諦めたのか、椿の腰に腕を回して抱きしめた。
それに気を良くした椿はリップ音を立てながら顔中に口付けて、満足したのか扉間を離そうとしたのだが....。
「ちょっと、この手はなによ?」
「あんな風に誘っておいて俺がお前を離すとでも?それに俺の邪魔をしたんだ、これくらいの責任は取ってもらおう」
そう言って冷や汗をかく椿を無視して扉間は抱き上げ、寝室へと向かったのだった。