弱虫ペダル

□小野田くんと御堂筋くん
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「じゃあ、小野田くん頼んだでー。
いっちゃんキッツイのお願いしますー。」

「……わっ、分かったよ鳴子くん…。ハァ…。それじゃあ行ってくるね…。」

京都合宿の夜、トランプに負けた僕は、みんなのアイスクリームやジュース、鳴子くんリクエストのエッ…エロ、エロ……エロホ……ンの買い出し係りになってしまった。
鳴子くんは「大丈夫やでー小野田くん!!ここは京都や!!知ってる奴になんて会うはずがないんやから、堂々とお会計して来てやー。」なんて軽く言うけど…僕そんな本買ったことないし…。

「ハァ…。」

コンビニへ向かう間、出るのはため息ばかり…。
そうこうしている間に、自転車はコンビニに着いてしまった…。

(大丈夫だ…。
まずは今泉くんやみんなに頼まれた物をカゴに入れて、最後に然り気無く成人雑誌のコーナーから………。
やっぱり無理だーっ!!僕には出来ない!!)

「キモッ。キモイ変なのおると思ったら、総北のキモメガネクンや。」

頭を抱えてブンブンと首を横に振っていると、聞いたことのある声がした。

「みっ、御堂筋くん!?」

鳴子くん…。知ってる人、しかも御堂筋くんに会っちゃったよ。

自転車を降り、ヘルメットを外した御堂筋くんは、フェンスに自転車を素早く固定している。

「あっ…。みっ御堂筋くん、ちょっと待って。
今度会ったら渡そうと思ってたのが、確かここに…。
あっ、あったー。って待ってー、御堂筋くん。」

カバンをゴソゴソしているうちに、コンビニへ向かって歩き出していた御堂筋くんを慌てて追いかける。

「御堂筋くん、これっ。
王立軍のスペシャルレアステッカー!!
前に自分のことを、王立軍の人型兵器2号機だって言ってたからさ、御堂筋くんに渡そうと思ってずっと持ち歩いてたんだ。
色も京都伏見カラーの紫だし、このホログラムが施されたロゴもカッコ良くて、御堂筋くんにピッタリだって思うんだ。」

御堂筋くんの横に並び、勢いよくステッカーを差し出した。

「なに…。相変わらず意味分からんなー。」

首を斜めに傾けた御堂筋くんは、ステッカーを凝視しているだけで手を伸ばそうとはしない。
やっぱり、幻のステッカーだから遠慮しちゃうよね〜。

僕は御堂筋くんが気にせず受け取れるように、強引にステッカーを渡して、一緒にコンビニへ入った(流れで付いて行っただけだけど)。

そして、雑誌コーナーの前で思い出してしまった。

鳴子くんの注文を…。

「なんや。キモイメガネやと思っとったら、エロイメガネやったんか。」

成人誌が並んでいる辺りで明らかに体をビクッとさせて、周りをキョロキョロし出した僕を不信に思ったのか、御堂筋くんは振り返った。

呆れられたかな〜。

「ちっ違うよ。実はさトランプで負けて、鳴子くんに――――という理由で、御堂筋くんもちょっと手伝ってくれると、嬉しいかな、なんて…。」

「イヤヤわ。キモイし。ボクかて、買ったことないから分からんわ。でも、マメトサカが……。」

パカァッと口を開けた御堂筋くんは、恥ずかしがることもなく、成人雑誌を物色している。
気のせいか、イキイキしてるようにも見える。
そして、その中の一冊を手に取ると「これ、マメトサカにお似合いや。」と言って僕に渡した。

「ありがとう。御堂筋くん。僕買ってくるから、途中まで一緒に帰ろう。」

御堂筋くんを待たせたら悪いから急いで会計して来たのに、御堂筋くんは僕を置いて何も買わずに帰ってしまったようだ。

アニメの話をしたかったのに、また出来なかった…。

少し落ち込んで旅館に戻った僕を待っていたのは、雑誌だけ買って帰って来てしまった僕に対するみんなのブーイングと、「こんなん、えげつない本を選ぶなんて小野田くん意外やな〜。これだけレジを通すなんて、ワイにはできへん。凄いなー小野田くん。勇者や!!」という鳴子くんの尊敬の眼差しだった。

雑誌を見たみんなに白い目で見られ、誤解を解くのに必死になるのは、この直ぐ後のこと。

………………

「水田クン。このステッカー、特別にキミにあげるわ。」

「良いの御堂筋クン!!」
(御堂筋くんがオレに!!特別に!!)

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