パラレル
□守るから。
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Jside
「おいっ!聞いてんのかよっ!?おらっ!」
その日もまた家の中から怒鳴り声が聞こえた。
そのときまだ中学生だった俺は家に帰るのが苦痛だったけど
帰らないといけなかった。
「お父さん・・っやめ、てっ・・・」
「雅紀っ!」
俺はまた今日もぼろぼろになっていた雅紀を抱きかかえた。
「何やってんだよっ!親父!」
「うるせぇな・・・黙ってろよ・・・」
「なんでいっつも雅紀ばっかりなんだよ!俺にだって殴ればいいだろ!」
俺たちは・・いや、雅紀が集中的に虐待を受けていた。
俺たちを産んでくれたお母さんは、事故で亡くなった。
その日を境に親父が俺たちに虐待を始めた。
同じ双子の兄弟なのに、雅紀は家から出してくれなくて、俺は外に出される。
俺が学校から帰ると、いつも玄関で雅紀が座って泣いていた。
学校にも行かせてくれない雅紀はもちろん友達もいない。
体に痣や、切り傷を作って。
「ごめん、・・ごめん雅紀・・・っ」
俺が泣きながら雅紀の手当をすると必ず雅紀は言っていた。
「いいの・・。僕が潤のこと守ってあげられてるなら・・・それでいいの。」
いつも。いつも言うんだ。
そう言われるたび、泣きながら雅紀を抱きしめた。
きっともっと泣きたいのは雅紀の方なのに。