パラレル
□Better
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Jside
「ありがとうございました。」
最後のお客さんが店を出た。
今日もありがたいことに、ショコラは完売。
うん、順調。
店を閉めるため、備え付けていたテラスの椅子を片付けようと外にでた。
「え・・?誰?」
一番奥のテーブルで、なにやら一生懸命ノートパソコンに打ち込んでいる男性が一人。
あ、昼間にショコラを買っていったお客さんだ。え?まだここにいたってこと?
季節は夏だけど、夕方すぎてるからさすがに寒くないか?
「お客様・・?」
後ろから声を掛けた。
「うわっ!」
「あ、驚かせてしまって申し訳ございません!」
「あ、いえ・・。」
「お客様、大変申し訳ないのですが・・当店はもう閉店なんですが・・」
「あ、これはごめんなさい!」
グレーの高そうなスーツ姿のその人は、急いでパソコンをしまおうとした。
「お仕事でしたよね・・・ごめんなさい」
「いえ、どこかで切れるタイミングがないと終わらないんで・・」
彼は笑いながら言った。
「お仕事、ご苦労様でした。」
俺は頭を下げた。
「いえいえ、そちらこそお疲れ様でした。お忙しいでしょ?えっと・・松本さん?」
「あ、お名前まで・・ありがとうございます。えっと・・「櫻井です。櫻井翔と申します」
「櫻井さん・・よろしくお願いします」
「こちらこそ!では、今日はここで・・」
「あ、はい!ありがとうございました!」
その人は気品溢れるオーラを放って、帰って行った。