パラレル

□飲みたいな
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Nside

「おはよ・・・」

「ん・・?和?」

「起きろよ?」

「ん〜・・ムリ。」

ジュンの朝はすこぶる機嫌が悪い。

吸血鬼のくせに低血圧かよ。

ふざけんな(笑)



「俺、仕事だからもう行くよ?」

「いってらっしゃ〜い・・・」

見送る気ねーもんな。

「もう!」

俺は寝室のドアに手を掛けた。

「あっ!和!」

「な、何!?」

「ほうれん草のケーキ!冷蔵庫にあるから持って行けよ!」

「ほうれん草!?」

「おう!鉄分豊富らしいから!俺様手作りだぞ?」

この吸血鬼は、ご飯のメンテナンスもバッチリだ。

「あ、ありがと・・」

「いってらっしゃい!」


なんだろ・・・。家政婦・・?お母さん?

なんだ、コイツ。






「うまっ!」


会社でほうれん草のケーキを口に運んだ。

ほうれん草の青臭さもなくて、ほんのり甘い。

「アイツ本当に吸血鬼なのか・・・?」




「ふ〜ん・・・お前が新しいヤツ?」

「えっ!?誰お前!?」

俺がジュンに会ったのは、就職してすぐに一人暮らしを始めたときだ。

「みりゃ分かんだろ?吸血鬼だよ」

「え・・・うそ・・・訳ありって・・・」

「そう。訳ありの訳は俺なの!」


その日を境にジュンは俺と同じ暮らしを始めた。

俺が仕事に行っている間は、専ら家事。

これがまた、そこらの女なんかよりもずっと出来がいい。

特に教えたことはない。

なのにいつの間にか出来ている。

この料理だって、彼の得意分野だ。
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