DIABOLIK LOVERS小説  ~迷える館入り口〜

□キミガタメ 〜side ユイ for シュウ 〜
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それはいつもの場所。

いつもの景色に流れる空気に変わらない時間。

ただ、見ていたいだけ・・というのは嘘でもなく真実。

細くて綺麗なくせのある金色の髪が風で靡く度に胸が高鳴る。

でも音楽を聴いているだろう彼は、この胸の高鳴りなど聞こえるはずもない。

時折揺れる髪と長い睫毛に触れてみたいという気持ちが私の心だけ高鳴る。

きっと彼には私との間に流れる空気も時間も風と同じように吹き抜けて行くのだろう。


それでもあなたの世界に近づきたくて
あなたの思う物を感じたくて


触れてはいけない物を触れるように私は手を伸ばす。


「・・・キミガタメ・・・・」  〜side ユイ for シュウ 〜



そこで彼の紫色の瞳が私を捕らえる。

まるで罠にかかった蝶のごとくその吸い込まれるような瞳に釘付けになる。

伸ばしかけていた手が行き場を無くしたまま震えながら小さく握りこぶしをつくる。

「ごめんなさい・・あの・・・」

微かに震える声で私は小さく謝った。

彼の瞳は何事もなかったかのように小さく息を放つと再び閉ざされる。

それがとても寂しくて切なくて胸がチクリと痛みを走らせた。

彼の全てを知りたいと思う。
彼が何を好きで何が嫌いでいつも何を考えどこにいるか知っていたい。
そして私の事も知って欲しい。
特別な存在になりたいと思う。

我儘な私はなんて自分勝手な人間なんだろうと心底思う。

「・・・・ここにいてもいいですか・・・?」

我儘な私はもう一度彼の瞳に自分が映って欲しいと願うあまり口を開いた。

そして綺麗な瞳が再び私を映す。
その瞳に私はどう映っているのだろうか。



「・・・・・好きにすれば」

それだけ言うと彼は再び瞳を閉じた。

たったそれだけの言葉で私は一喜一憂してしまうほど単純なのだ。
たったそれだけの会話で私の一日は薔薇色にも変われるのだ。

風が二人の間を通り抜ける。
月明かりが彼を妖艶に美しく照らし出す。

そんな彼を独り占めしたいという愚かな想いが胸を駆け巡る。
だけどそれはきっと叶わない。
彼は吸血鬼で私は人間。
そして彼にとって私はただの餌。

泣きたく成る程胸が締め付けられてそっと草むらに横たわる。
同じ視線に彼が映る。

こんなに近くにいるのに縮まる事のない距離に胸が痛い。
手を伸ばせば触れるのに拒絶されるのが怖い。

「あなたが好きなんです・・。」

きっと彼には聞こえないだろうと小さく呟いた。
目じりから涙が流れ落ちる。
悲しいのか、なんなのかよく分からない。

ただ言えるのはこの距離を越える程の力は私にはないのだ。
恋に溺れているのは私だけなのだろうか。
それでも、私はあなたを取り巻く全ての者から守りたいと思う。

そうして
世界は私とあなただけになればいいとさえ思う。

そしたらきっと
彼の瞳には私しか映らないでしょう?

あなたの側にいればいるほど醜い想いが募る自分が嫌になり
彼を起こさないよう音をたてずに静かに起き上がる。

そうして手が地面から離れる直前にふいに腕を引かれる。

突然の手の平の感触に驚いて振り向くと彼は私の腕を捕らえたまま、こちらをジッと見つめている。

「・・・・あんたはここにいたいんだろう?」

彼の突然の言葉に私の心臓が大きな音を立てる。

私の瞳から再び涙が流れる。

彼は驚きもしなければ嫌な顔も呆れた顔もしない。

「・・・・・・はい。」

小さく返事をすると彼はほんの一瞬だけ微笑んだ。

そして再び目を閉じる。
まるで安心した子供のように寝息をたてる。

掴まれたままの腕が熱を感じる。
些細な出来事で私の胸は大きく高鳴る。
彼には人間に対して感情などないかもしれないのに。

彼の気紛れな態度にさえ一瞬でも近づけたと思う私は
何て単純で愚かなんだろうと思う。
それでもその手を振りほどけないでいるのは
それでも彼が好きで好きでたまらないから。

もしも願いが叶うなら
このまま時が止まってしまえばいいのにとさえ思う。

叶わぬ恋心だと嘲笑うだろうか。
思い違いだと馬鹿にするだろうか。

それでも私はあなたの特別になりたいと願う。

「あなたが好きなんです・・・」

再び風がその声をかき消すように吹き抜ける。
今だけはこの世界には私と彼しかいないかのように

彼の手をそっと握り返して私は目を閉じる。

”あなたの見る世界に私が映りますように・・・・”


繋がれた手をこの先も同じでいたいと願いながら
私は一瞬の夢の闇に落ちていく。


End・・

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