BLEACH Dream

□第二章
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 この頃仕事終わりになつみの姿が見られない。尾田たちは野郎6人でつるんでいることが多くなった。
「なぁ、木之本がいない」
「ああ。いないな」
「調子狂う……」
そう言って肩を落とす尾田。
「しょうがないっしょ!木之本が何やかんや特訓するとかいって、あちこちの隊舎行ってんだから。俺らは、あいつのがんばりを黙ーって応援するっきゃないの」
「そうだぞ、尾田。理由がどうであれ、あいつに元気が戻って、やる気が満ち満ちてんなら良いじゃねぇか。別に俺らを嫌ってるわけでもねぇし。それに、朝昼と、いつもどーりいっしょにいるし」
「んー……」
「悩むなよ。てか尾田、そろそろ頃合って事なんじゃないか」
ボソッと李空が言う。
「あいつが一人でやってけるんなら、…寂しさを感じないくらい前向きになれたんなら、俺らの移動の決め時が来たって事だ」
「そうだなぁ。出世するんなら、三番隊に居続けるのは無理だからな」
「仲良しこよしも終わりだな」
「会う頻度がガクッと落ちるだけだ!ただそんだけだよ」
「お前ら、まるで木之本のせいで昇進断ってきたみたいな言い方だな」
「実際そうだろう。あいつが心配だったんだよ。だけど、もうその心配もいらない。もしかすると俺らあいつに追い抜かれるかもしれねーんだぞ。自分らのこと考えなきゃなんねーの、もう」
「そうそう!木之本はもう三番隊の中だけで篭ってるようなヤツじゃなくなったんだ。こうして外出て、あいつの世界を広げてる。俺らがいなくなっても、大丈夫だって!」
「ふん……」
ため息しか出ない尾田の背中を、仲間たちが「さささ!」と言って押して、食堂へと向かった。
 なつみは強くなると決めた日から、いろいろと行動を起こすようになっていた。大きく動いたのはある休日のこと。なつみは瀞霊廷内を駆け回っていた。

 その日までになつみは「力を付けるには」をテーマに考えをめぐらせていた。朝食を食べながら尾田らに話を聞いてみたり、寝る前に美沙に相談してみたりもした。彼らによると、とりあえず十一番隊の道場で鍛えてもらえとのこと。だが、生半可な気持ちでは話しを聞いてもらえないだろうから、覚悟を決めてからにしろと言われた。覚悟も何も、なつみには揺るぎない信念が植わっていたため、ここぞとばかりに休みの日に頼みに行くことを決心した。
「ってなわけで、今日は十一番隊に来てみましたよ。初めて来るなぁ……」
前にそびえ立つ建物からは男たちの猛々しい声、木刀のぶつかり合う音がとにかく響いてきていた。やっぱりこの隊の道場はウチのと違う!と再確認するなつみだった。そして、自分の求めているものが得られるだろうと目がどうしても輝いてしまう。
 いざ道場の扉を叩こうとぎゅっと拳を握ると、不意になつみは声を掛けられた。
「あれれれ〜?女の子がいるぅ。どうしたのぉ?」
下の方から少女の声がする。
「あ!草鹿副隊長、おはようございます!」
「おはよーっ」
やちるはなつみを見上げてにっこり笑った。
「剣ちゃんに用があるのぉ?剣ちゃんだったらね、今まだ寝てるからいないよー」
「いえ、更木隊長に用というか。…ぼく、道場で鍛えていただけないかと思いまして、お願いしにきたんです」
「じゃー、つるりんにお願いすると良いよ!つるりーん!!」
やちるはそう言うとばーんっと扉を開けて叫んだ。
「あのねー、つるりん!この子がね、つるりんに用があるんだってー!」
「朝っぱらからつるりんつるりんうるせぇんだよ!!」
なつみは、上半身裸で道場の中央に立ち青筋立ててキレる一角を見た。その周りにはそれまで一角に挑んで敗れて飛ばされただろう隊士たちが十数人転がっていた。
「おいっ!お前、用があんならさっさと済ませろ!俺は忙しいんだ!」
「あ、はい!」
なつみは慌てて道場内に入り、一角の前で跪いた。
「あ!?てめぇ、何して」
「ぼくに稽古をつけてください!よろしくお願いします!!」
「ハァッ!?」
いきなり現れて、いきなり近づいて、いきなり土下座をして、いきなり頼み込んできた見知らぬ娘に、一角は絶句した。
「強くなりたいんです!本気です!お願いします!」
「お、お前どこの隊士だ」
「三番隊第二十席、木之本なつみです!」
正座したまま顔を上げ、まっすぐに一角を見つめるなつみ。
「二十席だァ!?そんな雑魚がここに来やがったってのか!しかも、てめぇ女じゃねーか」
「つるりん、そんな言い方良くないよ。あたしだって女の子だよ!」
「うるせぇ!てめぇは黙ってろ!」
ぷーっとふくれるやちる。この様子を見ていた周りの隊士たちはざわつき始めた。
「ここぁ、キミみたいなお嬢ーちゃんが来るとこじゃねーんだよ」
「さっさとお家帰んな!」
「そうそう!帰って遊んでな!」
しかしどんなに野次が飛んできても、なつみは表情一つ変えずに真剣に一角だけを見つめた。両手は色が変わるほどぎゅうッと膝の前で握られていたが。
「黙れ、お前ぇら!」
一角もなつみから目を逸らさずにいた。
「遊びじゃねぇんだぞ。わかってんのか」
「わかっています」
「痛ぇだの、加減しろだの、泣き言は一切聞かねぇ。それでも良いのか」
「はい。女だからと特別扱いを受ける気は毛頭ありません。ここで斬術を体に叩き込みたいんです!どうかぼくに、戦いを教えてください!」
はっきり言い切るとなつみは再び頭を下げた。
「チッ……」
それを見て一角は舌打ちをした。肩にかついでいた木刀を下ろし、右手で支えながら立たせた。逆の手で頭を掻き毟り、悩むように唸り声を出す。
「だー、クソっ。仕方ねぇな」
「つるりん、オッケーしてくれるの??」
前のめりになって瞳を輝かすやちる。
「…ああ。だが、タダでとは言わねぇ。お前の力を試す。それで見込みが無ぇとオレが判断したら、大人しく帰れ。良いな」
「はい!(頼んでみるもんだなぁ、やったぜ☆)」
嬉しそうに笑うなつみ。
「(…返事は良いんだよな)おい!誰か木刀貸してやれ」
一角は近くにいた隊士から一本木刀を受け取る。それをなつみに差し出す。
「取れ」
「ありがとうございます」
なつみは立ち上がり、木刀を構える。
「わくわくするね!ゆみちー」
「なんか、既に一角は彼女に押されてるようだけど(笑)」
いつの間に来たのか、弓親がやちるの隣にいた。ほくそえんでいる。
「うるせぇ!誰が押されてるだとぉッ!!おい!木之本っつったか!?」
「はい!」
「全力で来い」
「…いきます!」
「ッシャーッ!!!」
一気に距離を詰め、なつみは一角の正面へ木刀を振り下ろす。カーンとその一撃を受け止められる。
「力が無ぇ。それがお前ぇの全力かァッ!?」
「うわっ!!」
一角に思い切り突き放されるなつみ。仰向けに倒れて、強く背中を打った。
「っツ……」
「痛ぇは言わねぇ約束だ」
「わかってますッ…!」
起き上がり、構え直す。
「もう一度、お願いします」
「次背中ついたら、こっから出てけ」
「はい」
気合を入れ、なつみは一角を見た。
(パワーで敵わないなら、スピードだ)
そう考えたなつみだったが、また先ほどと同じように一角の正面から振り下ろした。
「タァッ!」
「また吹っ飛ばされてぇか!?アッ!?」
振り下ろされるはずの木刀は一角の目の前から消え、へその高さを水平に走ってきた。カーン。
「…ッ!やるじゃねーか。オレ様にフェイントかけるなんてな」
「いけると思ったんですけど」
なつみの動きを素早く見切った一角は木刀を水平から垂直に構え直していた。次の攻撃が来ると思ったなつみは、急いで一角から距離を取る。
「言うじゃねーか!もっと来いよォ!!」
なつみは一角に認めてもらうために、必死で木刀を振った。何度も何度も、一角の隙をついているつもりなのに、全ての攻撃が受け止められる。
「やっぱり強い……」
「なかなかやるな、木之本。お前本当に二十席か?オレが見たところ、お前の実力は十席以上だ」
「そんなことないですよ。本当に二十席です」
「ハッ、まぁどうでも良い。もっと楽しませろよ!」
なつみはフッと笑い、また戦いを再会した。そんな一角となつみを眺めて、弓親は呟いた。
「木之本さん、楽しそうだね。意外と一角も、彼女にハマッちゃってるみたいだし」
「あたしもあの子、気に入っちゃったー♪」
やちるがにこにこしていると、扉の向こうからにこにこした人がもう一人やってきた。
「ひゃー、汗クサ!なつみちゃんたら、こないなことろで何してんの?」
「あ、市丸隊長!」
市丸の存在に気づいたなつみは気を抜いて、思わず扉の方を見た。スルッと木刀が下りるのを見て、一角がなつみの頭に拳骨を落とした。
「余所見してんじゃねぇ!」
「ワッ!」
「あ!ウチのなつみちゃんに何てことしてくれんの!?」
生まれて初めて拳骨を喰らったなつみは屈んで震えていた。「痛い」と言ってはいけないため、黙って耐えていた。
「くぉーッ……」
「何スか?市丸隊長。こいつのこと迎えに来たんですか」
丸くなっているなつみを横に、一角は市丸に問いかけた。
「いや、普段絶対来ぇへんようなここから、なつみちゃんの霊圧を感じたから、何や珍しいなぁ思て見に来たんやけど……。ちょっとなつみちゃん、泣いてへん?」
「大丈夫です……(涙)」
絶対に大丈夫じゃない声を絞りだしてなつみは答えた。
「こいつ何者なんですか。アンタんとこの二十席だって言いますけど、実力でいったら、もっと上のクラスだ」
「あ、バレてしまったん?それはボクが細工してんねんけどぉ。まぁまぁまぁ、それは置いといて。なつみちゃんは何でここで斑目クンと一戦交えてるん?」
「そりゃ、こいつがいきなりウチの道場で鍛えてくれって頼みにきたんで」
「そうそう!強くなりたいんだってー。だからつるりんにお願いして、ここで斬術教えてもらえるように、テストしてもらってるの♪」
やちるが楽しそうに割って入ってきた。
「そうなん?」
「斑目さん…、ぼくは合格でしょうか」
立てないでいるなつみは両手で頭のてっぺんを押さえ、一角を涙目で見上げた。
「ったく、しょーがねぇなー。そこそこ根性あるみてぇだから、これから来ても良いぜ。オレ様がお前をビシバシ鍛えてやる!」
「やったぁ!ありがとうございます!」
手は頭の上のままでお辞儀するなつみ。上げられた顔にはいっぱいの安心を含んだ笑顔が現れた。
「///!!うるせぇ!礼はてめぇがもっと強くなってからだ!」
「つるりん、なに赤くなってるの?タコみたいだよー(笑)」
なつみのぱっと輝いた笑顔に一角はハートを鷲掴みされたようだった。つまりその瞬間で彼女に惚れてしまったのだ。それで紅潮した一角の顔というか頭を見て、やちるが茶化す。
「てめぇは黙ってろ!!!」
「木之本さん、好きなときに来ていいからね。いつでも一角が相手してくれるはずだよ。…キミを気に入っちゃったみたいだからさ(笑)」
プッと吹きながら弓親がなつみを立たせ、言った。
「弓親ァ!別にオレはこいつに惚れたワケじゃねーからなッ!」
「僕そんなこと言ってないでしょ。何自分で墓穴ほってんの」
「……(怒)!!!」
「あの!本当にありがとうございます!ぼく、一所懸命がんばりますので、よろしくお願いします!」
また改めてなつみはお礼を言った。
「ぼく、…とりあえずこれから四番隊行きますんで、失礼します」
ズキズキする頭を押さえつつ、頭を下げ、クルっと出口へ方向転換。走ってなつみは道場を出て行った。
「バイバ〜イ♪早くまた来てね〜!」
走る背中を見送って、やちるはブンブン手を振り、自分もそこを出ようとする。
「剣ちゃんに報告しなきゃ!行ってくるね〜」
すぐ後に市丸も動く。
「ありゃりゃ。なつみちゃん、相当痛むんやね(焦)ボクついてくわ。お邪魔しましたぁ」
言って、一歩踏み出したが振り向いて、一角に忠告した。
「あんまりなつみちゃん傷物にすると、京楽さんに殺されるで気ぃつけや、斑目クン」
「なつみちゃん待ってぇや〜」と軽い足取りで立ち去る。その場に残された弓親と一角は呆然と去り行く嵐を見ていた。
「なっ、何で急に京楽隊長?」
「面倒に巻き込まれた気分だ……」
「でも良いじゃん、一角。恋しちゃってさ」
「違ぇっつってんだろッ!!てめぇら!どいつでも良いから、かかってこい!ムシャクシャしてきたぜ」
「照れ隠し(笑)」
「抜け!てめぇ弓親ァーッ!!!」
「やだよ〜」と言って、弓親まで道場から出て行ってしまった。この状況下にいた十一番隊隊士たちはこの後とんだとばっちりを喰らって、ちょっとテンションのおかしな一角にボコボコにされたらしい。
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