BLEACH Dream

□第二章
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 一人になったなつみは、先にお手洗いに行って顔を洗った。それから急いで綜合救護詰所へ。受付で事情を説明し、痛みを訴えているなつみ。
「すっごい力で拳骨が落ちてきて、頭割れたかと思いましたよ!」
「落ち着いてください。すぐに診てもらえますから(焦)」
「早くしてくださいー!」
ジタバタするなつみ。するとやってきたのは卯ノ花で、なつみの後ろからそっと頭に触れた。
「ここではお静かに願いますね。あら、たんこぶ」
「やっぱりできてますか」
卯ノ花を見上げるなつみは、今にもまた泣きそうで。
「すぐに冷やしましょう。ついて来てください」
「はい」
他の隊員になつみを任せるつもりでいた受付の者が隊長を止めようと口を開きかけたが、卯ノ花がそれを止めた。
「この程度ならすぐに終わりますから」
笑顔を見せるとなつみを自分の診察室へ連れて行った。これはなつみにとって幸運だった。

 ヒヤッとする感覚にビクッとしながら、なつみは冷却シートを貼ってもらった。向かい合わせに座っている卯ノ花はさらに包帯を取り出し、シートが剥がれたりずれたりしないようになつみの頭に巻いていった。
「6時間ほどこのままにしておいてくださいね。はい、終わりましたよ」
「ありがとうございます」
なつみは軽く頭を下げた。手当てが終わったので、これで部屋を出ようと足に力を入れたのだが、卯ノ花が話しかけてきた。
「ついでですから、治った怪我の様子も診てみましょうか」
そう言われてなつみはきょとんと卯ノ花を見た。
「は、はい……」
死覇装の胸元あたりを緩め、卯ノ花はなつみの胸部を触診した。次に腕、腰、脚と診ていく。
「よろしいですよ」
なつみは死覇装を整える。
「頬も綺麗に治りましたし、順調に完治しましたね」
「はい。もうあのとき受けた怪我で痛むところはありませんよ。本当に、ありがとうございました」
「良いのですよ、木之本さん」
卯ノ花がひとつやさしく微笑むと、じーっとなつみを見つめだした。
「なっ、何か?」
困ってなつみは口を出した。
「十一番隊に稽古を申し込むなんて、突然無茶なことをされたなと思いましてね。これから怪我が絶えなくなるんじゃないですか?そしたら、ここに通うことになってしまうかも」
「そうですよね…///お世話になります」
ぽりぽり頬を掻いて、照れてしまうなつみ。そして何か思いついたように目と口がぱっと開く。
「あ!」
「どうなさいました?」
「卯ノ花隊長!思いついちゃいました!」
「はい…?」
急に身を乗り出して話し出すなつみに驚きつつ、続きを聞く。
「隊長のおっしゃる通り、これからぼくはもっともっとたくさん傷をつくっちゃうでしょう。なので」
「なので?」
「いろんな怪我に対する応急処置とか、治療法とか、教えていただけませんか!?ぼくがそれを覚えて、できるようになったら、怪我するたびにここでお世話になるということは無くなりますよ!」
瞳をキラキラさせたなつみの提案を困ったような笑顔で聞いている卯ノ花。
「これはまた、思い切った提案ですね」
「ダメですか」
「そうですねぇ」
卯ノ花はうーん唸りながらと右手を顎に沿え、考え込む。
「あなたが自分でできるようになれば、そんな簡単なことはないでしょうけど。…ですが、できるようになるまでが大変ですよ」
「教えていただけることは、がんばって早く吸収します!お願いします!」
「困った方ですね」
断られるかと思い、なつみの押す態度が少し弱まる。しかし返事は嬉しいものだった。
「学びたいと思う気持ちを跳ね返すわけにもいきませんよね。…あなたの申し出、お受けいたしましょう。ただ、あなたの本気が見られないようなら、すぐにやめますよ。よろしいですね」
卯ノ花の言葉を聞いて、ぱぁっと表情が明るくなるなつみ。そしてもっと嬉しいことを聞く。
「私が指導いたしますから、時間ができたときにいらしてください」
「え、隊長が直々にご指導していただけるんですか!?そんな!」
手の空いている隊士に教えてもらえれば、それで十分だと考えていたなつみだったが、まさか卯ノ花自ら名乗り出たため驚きを隠せない。
「この話を聞いたのは私なのですから、当然ですよ」
「こ、これは、全力で期待にお応えしなければ」
大変なプレッシャーで思わず顔がニヤついてしまう。
「もちろんです」
「がんばります!!」
「はい」

 なつみは深々と頭を下げて、卯ノ花の部屋を出た。頭上の冷却シートが少し動く。
「なんて恵まれているんだろう!すごいコーチ陣だぞ、これは!」
成り行きにドキドキして、ついテンションが上がってしまう。そして調子に乗ったことまでひらめいてしまった。
「怪我が治せるようになるんだから、どんどん怪我したって良いんだ!だったら、欲張って、白打も教えてもらおうかな……」
言いながら四番隊隊舎から離れると、そろーっと二番隊隊舎の方へ視線を移す。
「この勢いなら、ぼくのお願いを聞いてもらえるのではなかろうか!」
強くなるためだ、迷っている暇は無いぞ!と自分に言い聞かせて、小走りに足を進めた。
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