BLEACH Dream

□第三章
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 暑い季節も過ぎ去り、読書の秋より食の秋が巡ってきたその頃、なつみは西堂と共においしいもので活気にあふれた流魂街の大通りを散策していた。
「榮吉郎さん!あれ食べる!」
西堂の袖を引っ張って、なつみは団子屋に並ぶみたらし団子を指差した。
「はいはい。俺は醤油の方が食べたいけどなァ」
「うん!」
「コラ!どーせ俺が金出すからって、いい加減な返事したろ今ァ」
「してないもん。榮吉郎さんが勝手に払っちゃうんでしょ〜」
「アァそうかい。みたらしも買うけど、全部食ってやる(笑)」
「あー!ずるーい!」
「ズルくない!おばちゃん、みたらしと醤油1本ずつちょうだい」
「はいよ」
勘定をする西堂の隣でなつみがぷくーっと頬を膨らませて睨んでいる。
「そんな顔すんな。口開けろ」
団子の刺さった串をなつみの方に向けた。
「わーい!あーん」
みたらし団子はなつみの口の中へ進んでいった、と思ったら西堂の口の中に入った。
「うまい!」
「にゃぷー!!!(怒)」
西堂は1つ減った団子の串をなつみに差し出した。
「そんな怒んなよ。1個ぐらい良いだろォ」
「むー。いただきますぅ」
5個が4個になった串を受け取り、食べ始める。「おいしい」と一言つぶやくと、西堂にぴたっと体をくっつけた。

 その後、トイレに行きたいとなつみが言ったため、街の公衆トイレに行った。
「ったく、女の子はしょうがないなァ」
「やめてよ!そんな言い方!」
ぷんすかしながらなつみはトイレに急いだ。
 戻ってくると、今度は西堂がトイレに行くと言い出した。
「ぼくが入ってる間に行けばよかったのに」
「急に行きたくなったんだから、しょうがねぇだろォ。ちょっと待ってろよ」
なつみの頭をぽんぽん叩くと西堂は男子トイレに入っていった。
 その公衆トイレは大通りの脇にあった。退屈を感じたなつみはちょっとだけ歩いて通りの店を眺めていた。するとそこに憧れの君が登場した。
「やぁ!なつみちゃんじゃないかぁ!」
「京楽隊長!こんにちは!///」
「んふふ〜。私服かわいいねぇ」
「あの、これは美沙ちゃんのおさがりでして」
「そっか!相変わらず仲良しなんだねぇ」
「いえいえ///」
なつみは照れて京楽の目が見られないでいる。
「ねぇ、なつみちゃん。これからボクとデートしようよ」
「え!?いや!あの!今日は連れがいまして!今、待ってるとこなんです。トイレに行ってて///」
「あぁ、そうかそうか。一人じゃなかったんだ。それはごめん、邪魔しちゃ悪いよね。ごめんごめん」
「いえ、そんな謝らないでください」
困りながらでもやっと目を合わせてくれたなつみに満足して、京楽はその場を離れることにする。
「じゃあボクは行くよ。なつみちゃん、お願いがあるんだけど聞いてくれる?いつか絶対ボクとデートしてね。お願いだよ!またね」
ぷにぷにっとなつみの頬を触ってから、京楽は人混みの中に消えていった。
 なつみは京楽に触られた頬に名残惜しそうに手を添えて、京楽が去って行った方向をぼーっと見つめて突っ立っていた。
「オイッ!」
「アタッ!痛いよぉ……」
戻ってきた西堂が心の抜けていたなつみの脳天にチョップを落とした。なつみは叩かれたところを摩りながら西堂を見た。
「ちゃんと手ぇ洗ったぁ?」
「気にするのソコかよ。洗ったよ」
「むぅー」
頭のてっぺんをさすりさすり、京楽が行った方とは逆の方へ歩き始める。と、西堂がなつみに耳打ちをする。
「お前、京楽隊長のこと好きなのか?」
「!!!///」
顔を真っ赤にしてなつみは近すぎるほどの距離にある西堂の顔を見た。
「そうか。好きなんだな。でも、今日はデート断ってくれてありがとな。さ!栗きんとんでも探しに行きますかァ」
照れて何も言えなくなっているなつみの手を、無意識でもいつもより力を込めて握り、引っ張っていく西堂の姿があった。
 それを道の反対から見ている京楽の姿もあった。彼の目にはなつみしか映っていなかったのだが。
「ちょこちょこ歩いて、か〜わいいんだからぁ」
そう思っているだけだった。その人混みの中、京楽の知らない男と京楽のかわいいなつみが手をつないで歩いているなど、彼には想像もできなかった。だって、なつみの連れはてっきり美沙だったんだと思い込んでいたのだから。

 そんな日もあった。
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