BLEACH Dream

□第四章
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 体の変化が完全に落ち着いた後、マユリは何時間とかけてなつみの体を調べ上げた。遅めの昼食を取りつつ、なつみはマユリが検査結果を出すのを待った。そして空が赤く染まりだした頃、マユリがカルテを見ながらなつみのところへ戻ってきた。
「フーン…、どこにも異常は無いみたいだネ。完璧な男の体だヨ。大成功だ」
「はい。どこも痛くないですし、なんだか前より力がついたみたいで。ちょっとだけ、トイレで困っちゃいましたけど」
「フフッ、慣れだヨ。何度もやれば自然にできるようになるサ。それから、忘れるんじゃないヨ、男子の方に入らなければいけないヨ」
「わかってますよ///」
「慌てているときの君なら、やりかねないからネ」
「……」
口をすぼめてなつみはマユリを見上げた。それからマユリは話し続ける。
「良いかネ?これから毎朝ここへ来てもらうヨ。私が君の体を調べるためにネ。データを集めたら、いつ元に戻るのか計算する。そして、また新しい薬を投与するからネ」
「はい!了解しました!」
「じゃあ、帰ってくれてかまわないヨ」
「はい!ありがとうございました!失礼します!」
頭を下げ、なつみはマユリの部屋を出て行った。
「やったー!ほんとに男になっちゃったー!!」
両腕をブゥン!と挙げて喜びながらなつみは技術開発局の廊下を歩いていった。

 宿舎に戻り、部屋に到着するとなつみは美沙の草履が玄関にあることに気づいた。
「美沙ちゃーん!!いるー??」
早く自分の姿を見てもらいたくて、なつみはぽんぽーんと草履を脱ぎ捨て部屋に入っていった。そしてノックもせずに美沙の寝室を開けた。
「見て見てー♪」
刹那、なつみの顔面に枕が飛んできた。
「グフッ!!!」
後ろに倒れて後頭部を強打したなつみ。枕は取られ、次の瞬間には喉元に斬魄刀が構えられていた。
「あわわっ!美沙ちゃん!何してんのッ!!!!?」
「あんた誰!!」
「へっ!?」
「『へっ!?』じゃない!誰かってきいてんのよ!」
「美沙ちゃん、ちょっと待ってよ!ぼくだよ!」
「馴れ馴れしいのよ!あたしの名前呼ばないで!大体、あんたなんか知らないわよ!」
「ヒャーッ!!!近い近い近い!刀近いよ!!ぼくだってば!なつみだってば!!」
「はぁ!?フザけたこと言ってんじゃないわよ!あんた男でしょ!そんなウソついて、あたしのこと襲おうっての!?」
「違うよ!違うってばぁ!!ほんとにぼくなんだってばぁ!!今朝、涅隊長のとこに行って、男の体にしてもらったんだよ!信じてよー!!ほらっ、ほら、ぼくの斬魄刀、錠之芽吹だよ!ね!ね!ぼくだってば!木之本なつみだってば!」
なつみは腰から錠之芽吹を引き抜き、美沙に見せた。すると美沙は信じられないといった顔をして斬魄刀をなつみの喉から離した。
「ウソ……、なつみ?本当になつみなの?」
うんうん!と高速で何度も首を縦に振ってなつみは訴えた。そして美沙は事態を理解した。
「あんた……、何してんのよぉぉぉぉぉぉぉおッ!!!!」
「ぎゃうぅぅぅぅッ!!!(半泣)」

 美沙に「すごいでしょー」と言って自分の体を見せびらかしてやろうとワクワクして部屋に帰ってきたのに、なつみはお説教タイムへと突入させられてしまう。
 居間で正座をさせられ、なつみはドカッとソファに座って鬼の形相で見下ろしてくる美沙に不本意ながら反省の言葉を述べる。
「突然男になって帰ってきて、すみませんでした」
これを聞いた美沙の眉がピクッと動く。
「すっ、すみませんでしたぁ!!」
慌ててなつみは土下座する。美沙が静かな口調で話し始める。
「あたしは、涅隊長から筋肉増強剤をもらうとしか聞いてなかったんだけど。それがどうして性転換になったわけ」
「それはっ、その、初めから男になるなんて言ったら、美沙ちゃんが驚いちゃうかなーと思って。ヘヘッ」
「笑ってんじゃないわよ!!」
「はいぃッ!!」
「驚くどころか、怒るわよ!あんたが男になるって知っていたら絶対止めた!もー…、何てことしてるのよ、あんた……」
美沙は俯いて顔を両手で覆った。
「美沙ちゃん、泣かないで」
「泣いてないわよ!!うっさいわね!!(怒)」
「ぎゃふっ(泣)」
なつみがビクビクして小さく丸まっていると、美沙は急に立ち上がりなつみをズバッと指さして言った。
「良い!?あたしは男と同じ部屋なんてご免なんだから!今すぐ出てってもらうわ!!」
「えぇーッ!!!!?そんな、急すぎるよ!ぼく行くとこ無いよ!!」
「うるさい!さっさと荷物まとめて出てけ!!」
美沙に首根っこつかまれ、なつみはズルズルと寝室に連れて行かれる。
「わー!!!美沙ちゃんの鬼ぃーッ!!!(号泣)」
「んな低い声で言っても、気持ち悪いだけなんじゃボケェーッ!!!」

 数分後、(なつみと)美沙の部屋の扉の前に、でかい鞄とでかいテディベアを持った少年が立っていた。
「女に戻るまで、帰ってくんじゃないわよ」
「ふぅぅぅッ(泣)」
「さっさと行く!!」
「うぅぅぅぅ……(泣)」
なつみ少年は泣きべそをかきながら、足を引きずり五番隊宿舎から追い出された。

 寝床を無くしたなつみは、とりあえず自分のしたことについての報告とこれからの相談をするために市丸のところへと向かうことにした。
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