短いお話

□これ以上....
1ページ/1ページ

うちはと千手が手を組んだ。
その噂は瞬く間に他族へ広まった。
そして、私達うちはと千手は共に里作りを始めた。


イズ「ただいま。兄さん、リン。」
扉「兄者、任務無事完了だ。」


柱間、マダラ、私は部屋で今後の里作りについて話していると仕事に行っていた二人が帰ってきた。


柱「扉間!?何を言っておる!そんな傷だらけで!」
「イズナ、怪我が....!」


部屋に報告をしに入ってきた二人は怪我だらけだった。
私と柱間が驚いているうちにマダラはすでにイズナを椅子に座らせていた。
さすがという感じ。


マダ「リン」
「う、うん。」

マダラに名前を呼ばれ、イズナに近づく。
扉間の方は柱間に連れられ多分ミトの方に行ったのだろう。

イズナの一番大きな傷に手を添える。
手元にチャクラを集中させると緑色の光に包まれ傷が治ってゆく。


マダ「イズナ、なぜこんな怪我をするまで無理をした。
お前の傷はまだ治ってないんだぞ。」
イズ「思ってた以上に敵が多くて....」


そう。
イズナのお腹にある傷――千手との戦いの最中扉間にやられた傷はまだ完治していないのだ。
そのためあまり仕事に就かせたくはない、というのが私、マダラ、柱間、扉間、四人の本心。
でもイズナは大して気にしていないのか動かないと体が鈍ると言って、仕事をもらおうとマダラに詰め寄っているのを度々見かける。
その度にダメだと言われてデスクワークを強いられてきたが、今回は特別にマダラが許可をした。
が、結果この有様だ。


マダ「第一、あの男も居ただろう。
あいつは何をやっていたんだ!」


眉間に深い皺を作り、そう息を荒立てて言うマダラ。
しかしそのマダラを見て慌ててイズナは口を開いた。


イズ「扉間はオレを庇ってもっと大きな怪我を負ったんだ.....!
オレよりも体に負担が掛かってるのに、オレの事気遣ったりしてくれた。」


あいつは悪くないよ。
そう言って俯くイズナ。
マダラは何も言わずに部屋から出ていってしまった。
多分、柱間たちのところへ行ったんだと思うけど......大丈夫かな?



「イズナ、大丈夫?」
イズ「ん、大丈夫だよ。
リンが治してくれるから痛くない。」


そう言ってニッコリと笑うイズナ。
その姿が、余計に私の胸を痛くさせた。



「イズナ....。」
イズ「....リン?」



ぎゅ、とイズナの首に腕を回す。



イズ「リン?ど、どうしたの?!」


どうしたらいいのかわからないのか、イズナは私の頭を優しく撫でる。
その手つきがぎこちなくて、少し笑いそうになった。


「イズナ、お願い。」


イズ「?」



「これ以上、傷つかないで......!」



千手との戦いの中イズナが大怪我を負ったと聞いたとき、心臓が一瞬止まったかのような、そんな感覚に襲われた。
言葉では言い表せられないが、とてつもない不安に駆られた。
大切な人がいなくなってしまうかもしれない。それが、とても怖かった。


ゆっくりと、優しくイズナは私の背中に腕を回した。

イズ「大丈夫、オレはそう簡単には死なないよ。
だから、泣かないで。」


「う、ん.......う゛ん......!」


ボロボロと落ちていく涙が、イズナの服に小さな染みを作っていく。
ぽんぽん、と小さな子をあやすかの様に彼は私の背中を撫でてくれた。
暖かくて、私の大好きな手。
イズナはここにちゃんといる。
そう思うと、涙が一層溢れて来た。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ