B二次創作
□短編
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【届かない想い】
沢田綱吉、将来のネオドンボンゴレプリーモことボンゴレマフィアの次期ボスである。
その少年は運動神経、学力…等、ほぼ全部が平均の下にいる。
そんな少年に惚れる女はいない、と普通は思うだろう。
…だが、それは違う、沢田綱吉はとある一人の女にモテモテである。
その女、三浦ハル。
綱吉とは違う学校に通っている緑中の生徒である。
いつものようにハルはストー…警備をしていた。
ハルは綱吉が何者なのかを知っている。
どんなに危険な立場にいるのか、ちゃんと把握している。
その為、毎日のようにストー…警備をしている。
周辺に怪しい者はいないか目を光らせながらキョロキョロと周囲を警戒する。
(ふぅ、今日も大丈夫みたいですね…)
ほっと一息をつき、ハルは綱吉の家に向かう。
何故向かうか?恋愛感情にとても鈍い綱吉にアタックをする為だ。
もう三年くらいそのアタックをしているが、流石綱吉。
全く気付かない。……いや、もしかしたら気付いているのかもしれないが。
いつものようにインターホンを押して中に入った。
「お邪魔しまーす!!」
中はとても静かだった。
奇妙なくらい、とても静かだった。
…何か、あったのだろうか。
焦る気持ちを必死で抑えハルは綱吉の部屋へと向かった。
ノックをしようとした時、中から声が聞こえてきた。
「…いい加減にしろよ!!!俺はならないって言ってんだろ!!!」
「これは決まっていることだ、お前が拒否しても手遅れなことぐらいお前だって分かってんだろ」
「でも!!!」
「お前は将来ボンゴレのボスになるんだ、お前がもしならなかったらマフィア界は大変なことになる。骸が言ってるような世界大戦が起きるかもしれないんだぞ」
「………」
どうやらとても大事な話のようだ。
ハルはこれ以上聞いたらいけないと思い、足音を立てないようにゆっくりと綱吉の家から出ていった。
家への帰り道、ハルは少しだけ暗い表情をしながら歩いていた。
綱吉のあんなに覇気迫った声を聞いたのはとても久しぶりだったからだ。
正直とても怖かった。
つまり逃げたのだ。
だって、ツナさんあんな荒い声なんて出さないんですもん
はぁ、とため息が漏れる。
今日で一体何回目のため息なのだろうか。
「三浦ハルさんですか?」
「はひ?どちら様ですか?」
なぜ自分の名を?
はて、こんな人と会ったことがあっただろうか、喋ったことがあっただろうか?
いや、こんな人知らない。
じゃあ誰なんだろう。
「あの、なぜハルの名を?」
「あぁ、すいません、申し遅れました。僕は三浦先生の同僚の山瀬と申します。」
「…はぁ、で、えっと、父になにか用、ですか?」
「毎日のように三浦先生からはハルさんのお話を聞いてまして、それで、さっき見かけたので声をかけた次第なんですが……」
「あっ!そうなんですか!…そうですね、こんな所じゃなんですし、中に入りますか?あともう少しで父も帰ってくると思いますし」
「では、お言葉に甘えて」
ハルに話しかけた男性は少し痩せ気味で、髪はボサボサとしており、眼鏡をかけ、歳は結構いっているように思えた。
家もすぐそこだったしせっかくここまで来たのに茶の一つも出さないのは流石に失礼だと思いハルは自分の家に招待した。
一応デンジャラスな人間でも一通りの常識はちゃんと頭の中に入っている。
「…ごめん、リボーン」
「たく、どんな芝居させてんだお前は」
場所は変わり沢田家の家。
実は先程の喧嘩は綱吉がリボーンに頼んだことによりあった芝居であった。
「まぁ俺は本当にボスになんてなりたくないけど」
やれやれと思い机に向かう。
綱吉の机の上には色んな参考書が散らばっていた。
猿でも分かるイタリア語、猿でも分かる英語、他にも色々な参考書が散らばっていた。
綱吉は嫌々ながらもボスになることを心の中で決意し、毎日のように勉強をしている。
最初は本気で分からなかったイタリア語の綴りも今までの成果があって少しだけなら喋れるようになった。
「でもなんでわざわざハルを追い返したんだよ」
「…もう、関わって欲しくないんだ」
未来に飛ばされた時に思ったこと。
もう二度と彼女達を巻き込みたくないという思い。
自分はいずれ本当にイタリアンマフィア最強のボンゴレのボスにならなくちゃいけない。
前までは他人事のように思っていたマフィア界のことも、色々なことがあり他人事とは思えなくなった。
だから、綱吉はハルを避けている。
イタリア語の文章をノートに書き込み、作業に戻った。
「…そこはお前の自由だ、だがもしもハルを泣かせてみろ、ポイズンクッキングが大量生産されるからな」
「えっ、それだけは死ぬ気で阻止する」
リボーンとはここ最近冗談を言い合えるくらいになった。
まぁポイズンクッキングが大量生産されるのは実際あることなので冗談でもないが。
一通りのリボーンからの課題を終え、綱吉は昨晩中断していたゲームの続きを開始する。
ゲームオーバーの文字が並んでいた。
「……ランボ、またか…」
せっかくこのステージまでたどり着けていたというのに。
全くあの子供にも困ったものだ、と笑いながらゲームをするのをやめた。
*END*