B二次創作
□短編
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【亜門さんと金木くん】
不慮な事故で人間から喰種と呼ばれる"ヒト"しか食べれない生き物になってしまった金木研という男は、ただただ空を眺めていた。
太陽は雲に隠れ、時折こちらの様子を見てくるように出てくる。
そして空には、船が飛んでいた。
「……え?」
いや、待て、なぜ空に船が飛んでいる。
というかなんだこのSFのような生き物、いや、宇宙人だろうか?
とにかく、夢、とかアニメとか空想の中でしか出逢えないような生き物が周りを歩いていた。
そして、ふと、気付く。
「あれ…ここ、どこだろう」
ぼーっとしながら、金木は。……いや、唖然としながら金木は様子を眺めていた。というか傍観していた。
そんなぼーっとしていた金木に話しかけようとなにか色々ブツブツと独り言を発している男性がいた。
身長やガタイはまさにいい男といった感じで大きな鞄?みたいなのを手に持っている。
その視線に気付いた金木はちらりと、ただ気になったから見たのだ、そして驚いた。
目をまん丸にして、オーバーリアクションをとってみせた金木は難しい表情をしながら男の近くに寄る。
気まずい雰囲気が二人から流れる。
この二人はライバル、いや、宿敵といった所か。
会う度に生死をかけて戦っている。
だが、流石にここで乱闘するのはマズイ。
以前に素顔を晒してしまっている金木はマズイという表情をしながら男の様子を見る。
男の名前は亜門鋼太朗、金木のように喰種と呼ばれている生き物を排除するための組織に入っている。
観念した金木はそっと、小さい声で亜門に向かって言葉を発した。
『ここじゃあお互いの身分上なにかと問題があるので人の少ない所に行きましょう』
それを聞いた亜門は静かに、ゆっくりと首で頷いてみせた。
***
「で、どうしますか…」
「…どうしろと聞かれても、困るんだが」
人がいない路地裏に入り込んだ金木と亜門の二名は話し合うことにした。
戦うにはなんか色々とめんどくさいからだ、それは亜門も同じだった。
「喰種、の匂いはあるのか?眼帯」
眼帯、と呼ばれた金木は苦笑いをしながら首を振った。
「眼帯って…仲間の人、みたいな独特的な匂いは感じませんね」
「……そうか」
「あの、えっと……」
「亜門でいい、眼帯」
「流石にその名前で呼ばれると困ると言いますか。なんと言いますか………困るので、対応に」
金木がまた苦笑いをしながら亜門に話す。
なんとなく察した亜門は嫌そうな顔をして金木に言った。
「じゃあ、なんと呼べばいい」
「金木で、いいですよ」
「じゃあ金木、貴様。……この状況をどう思う」
「どうって…………どう、なんでしょうか?」
首を振り、両手をあげてみせた金木は亜門を見る。
ただただじっと見る。どうやら意見を求めているらしい、という事に気付いた亜門は頭をガシガシとかき、金木に言葉を発す。
「…二時間後に、またここで落ち合おう」
「情報収集、ですか」
「ああ」
唐突な亜門の考えだったが金木もそうしなければと心のどこかで思っていたのであっさりと承諾してみせた。
亜門と金木は敵同士、そんな二人は休戦することにした。
そうせざるを得なかった。
***
亜門は正直、あまり金木を信用していない。
やはり、自分は喰種捜査官。喰種を信用するのは難しいらしい。
先程、金木は喰種の匂いはしないと言った。嘘をついているような表情ではなかったが、喰種は嘘をつくのが得意…という所まで考えるとやはり嘘なのではないか?と疑っている。
「…万が一の事態に備えて、金木を駆逐することも考えていなければならないな」
もしも、出会い方さえ違っていたら亜門と金木はゆっくりと話していたのかもしれない。
少なくとも亜門はそう思っている。金木はどうか知らないが…同じ気持ちかもしれない。
そこまで考え亜門は苦笑いを浮かべた。……どうして喰種捜査官の自分が喰種と共同しているのか、上にバレたら首飛ぶんだろうか…いや確実に処分を受けるだろう。
そうなる前に、なんとかしなければ。
***
亜門さんとはあーいう風に一応話はついたけれど、
(これ、とてつもなくフラグ立ってるんじゃ)
いやいや、勘違いだ、うん。
などと考えていたら誰かに当たった。
ゴツッと。
「え、あ、あの、大丈夫?です、か?」
忘れかけていた、マズイ。
最近食べていない。
焦って周りを見る。
それは、逆効果だったようで。
ヒトヒトヒトヒトヒトヒト、
「あっ、いやぁすいません、助かりました」
「え?」
「ちょうど今、追われてたところなんですよね、まぁ仕事柄。」
「は、はあ。」
*続くかもしれない*
***
「お妙さァアアアアアアアアアアん!!!!!将来の夫、近藤勲!!!!仕事を終わらせやって参りまし……フゴォッ!!!!!」
「あら?こんな所にゴリラが、動物園に電話しなくちゃ」
「待ってお妙さん、俺人だからね、ねぇ、ちょっ……お妙さぁん……」
突然屋根から現れた男を女は笑顔で殴り飛ばした。
彼らにはいつもの光景、最近起きたらここにいました☆が起こった金木は初めて見る光景。
いや、あまりにもカオスじゃないか…?
とやや疑問に思いながらとりあえず身を潜める。
お妙が般若をバックに仕えている。
危険を察知した金木は退散しようと回れ右をした。
……のだが
「あらあら、金木さんじゃない」
即見つかった
「はっはっは、お妙さんの照れ隠しはやっぱ可愛いなぁ、なんつーの?愛の鉄拳みたいな?」
朝からお妙に会えて、会話もできたゴリラこと真選組局長近藤勲は超ご機嫌だ。
「あの、さっきのは、アレ、あの、アリなんですか許容範囲なんですか」
「好きな女性に触れてもらえる、俺ァそれだけで幸せだからよ」
ハッハッハ!!!と豪快に笑う近藤を見て金木は思った。
どこまでもポジティブシンキングだなぁこの人、と。
「そういえば、金木くん」
「はい?」
「君、ここ数日ご飯食べてないらしいじゃん、どうしたのさ、病気?中二病?この世の中ぶっ壊したい派?」
そう近藤に問い詰められ、金木はそんな訳がないだろう。
と言おうとした。
のだが、何故か見当たる事が多いような気がした。
思い出される自分の暴走、ああ。
……恐ろしいほどに近藤の予想は当たっていた。
ヤバイなこれ、結構鋭いぞこの人。
そう思いながら金木は考えた。
このむさくるしい人からどうやって離れようかと。
「食欲がまだ出てこないので、だから気にしなくて大丈夫です。食欲が出たら、ご飯は食べますし」
嘘は、言っていない。
ご飯を食べたのは、1週間前くらいであり、実際、お腹は減っていない。
喰種とは、そういう生き物なのだから。
「えぇ〜?その年でダイエットぉ〜?まだまだ若いのにぃ〜?そんな事気にしたら駄目だぞ金木くん、いいか?男はガッツリとだ。正直に生きるんだ。」
「ハハ…近藤さんは正直すぎると思うんですけど」
「俺か?……うーん、だってお妙さん超イイ女じゃん、自分の意思をしっかりと持っていて、それにあまり素直になれない、ツンデレだぞ!!!!クソ可愛いだろ!!!!………ムラムラしてきた。」
「近藤さんの性癖に口を出す義理はないんですけどそれ本人の前で言ったら絶対ダメですからね。」
*END*