B二次創作
□短編
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どうして自分が今、山本に肩を食べられているのか。
どうして自分の肉を食べているのか考えていた。
なんで山本が自分の肩を食べている?
目の前にいる山本は山本だけど山本とは思えない…いや、思いたくない。
「どーしたツナ?怯えて…あ、そっか…今から俺に食われるんだもんなー…今まで隠して来たのに…だから、ぜーんぶツナが悪いんだぜ」
「痛い、よ…やまもと…」
「お前結構美味かったんだな、もっと早くにこうしときゃよかった」
***
綱吉は山本に食べられながら、人間を食べる生き物がいるのを思い出していた。
数週間前、綱吉、獄寺、山本のいつもの三人は山本の家でテレビを見ていた。
テレビでは喰種についての特集があっていた。
『喰種は我々の近くにいて、我々と違う舌の作りをしているので、我々が食べるのを食べるとすごく不味く感じます、ですが、例外もいます。喰種は死体一体を食べるだけで大体は何も食べずに生きていけれます。あなたの近くに喰種がいる場合、至急CCGにご連絡ください。あなたの安全は保証します。』
『つまり…喰種はUMAっていう事ですね!!』
キラキラと目を輝かしながら獄寺は言った。
すかさず綱吉が突っ込んだ。
『獄寺君、UMAどころか俺達の命が危ないんだよ!?』
『…もしも俺が喰種だったらツナと獄寺はどうすんだー?』
『すぐにインタビューする』
『そんなの関係ないよ!でも、本当に喰種だったら俺達もう食べられてるね』
『ははっ!だな!』
『お前は喰種なのか!?早速インタビューだ…心して答えろ』
『ちょっ、獄寺?』
『喰種って信じますか?』
『お、おう?』
『獄寺君!!山本が困ってるよーーーっ!?』
あぁ…そっか、山本は喰種って事を隠しながら俺達と一緒にいたんだ。
そっか…喰種、なんだ
「…そういう事、か」
助けたい。
山本を、助けたい。
喰種でも、自分の親友だから、山本は山本だから。
だから、そんなに辛そうな顔をしてほしくない、見たくない。
クロームの事を言ったら赤くなるあの山本に戻って欲しい。
だから、だから。
「…山本、喰種って人間の肉食べるんだろ?…じゃあ、一番肉のある腹でも切ったら…山本はいつもの山本に戻るの?」
「…何言ってんだお前」
綱吉が素っ頓狂なことを言い出したので山本は一度止まった。
今、なんて言ったコイツ?
いつもの俺ってなんだ。
俺はお前ら…大事な仲間達に自分が喰種だってバレないようにしていた。
喰種だってバレたら殺されるって、白鳩に捕まるって、殺されるって思ってたから。
なら、バレないように生きようって思ったから。
バレたら自分の存在などなかったことにしようって思ってたから。
なのに、ツナはそんな俺を否定している目で見ない。
少し恐怖感情があるみたいだけど、喰種の俺を受け止めようってしてる。
大空は全てを包み込むってこういうことなんだ、なんて考えている自分に少し笑った。
「俺の肉でいいならあげるから…だから、もう隠さなくていいから」
「…へぇ?こんなに信頼されてたのか俺って…けどさぁ?全部嘘だって知ったらどんな気分?」
「…別に、山本が喰種だって関係ない。前も言ったろ?」
屁理屈を捏ねる山本に綱吉は動じず、というか肩食べられたのにも関わらず自分の肉をあげるからもう楽になって、と言われ、山本は混乱していた。
できるならば、信じたい。
親友のことを信じたい。
信じて、いいのかな。
コイツのこと、信じて、いいのかな。
思い出すのは、今までツナが戦いをしているときに必ず言う言葉。
『仲間に手は出させない、絶対に俺が守る』
……しんじて、いいのか?
「山本、俺は絶対に山本を売ったりしない」
「山本が喰種だってバレないように、俺、頑張るから。」
「だから、並盛に戻ってまたバカみたいに騒ごうよ」
「ツナ…俺の事、まだ信頼してくれてんのかよ…?」
「だって、山本は山本だから、だから…喰種でも関係ないよ…なんならゾンビだって構うもんか」
山本は山本。
その言葉にどれだけ救われたか数え切れない。
学校のヒーローと言われていても。
野球部のエースと言われていても。
それが山本なんだ
喧嘩が始まりそうになったら止めてくれるのが山本
たまには一緒に騒いでバカやったりするのが山本
猫とか犬とか鳥とかになつかれるのが山本
たまには黒いけどそれも山本
喰種でも山本
だから、そんなの自分は気にしない。
ゾンビだっていいし、なんだっていいんだ。
外見なんて、関係ない。
だって、山本は山本だから。
「だから、さ…気にしなくていいんだよ?」
「ツナ、今お前の状況どんなんか分かってんのか?」
「うん…多分、山本がこのまま俺を放置したら間違いなくそこで俺を見ている喰種さんに食べられちゃうね?」
「ツナ…」
「なあ、山本…今ならまだ、俺だって死んでないし…肩見えてグロテスクだけど、痛みも多分さっき山本から渡されたので全然痛くないし…大丈夫だからさ、お腹がすいたら俺に言ってよ、きっと、他の皆も山本が喰種だって聞いても動じないと思うよ?」
「でも!!!!」
「だって、俺は山本の親友だろ?」
これが、自分の親友。
沢田綱吉なんだ。
いつもはヘタレでダメダメで学力もないけど
誰よりも仲間のことを大事にする。
心がとても優しいツナなんだ。
だから俺は未来に行って、一緒に戦うことができた。
死にかけたけど、一緒に戦えた。
雪合戦したり、花火見たりするんだ…か。
それって俺にも当てはまるのかな?
「ツナ、俺…お前と同じ人間食べてしか生きていけないんだぞ?」
「うん」
「本当は、人間みたいに普通に食べ物食べたいんだ」
「うん…ん?…ね、ねぇ山本…普通に寿司食べてるよね?」
「あぁ…俺はその例外で普通に食べれるけど…ごめんツナ。」
「え?」
「俺、親友のお前食べた…本当にごめん!」
「あっ!いいよいいよ!大丈夫だよ!」
「……ごめん」
「…うん、大丈夫だよ…戻ろっか、並盛に」
「ツナ…サンキュー…な」
「いつもの山本らしくないよー?ほらいつもみたいにヘラヘラしてなよ」
「ヘラヘラって…いや、まー確かにそうかもしんないけど」
ニッと笑った山本を見て綱吉は安心した。
「いつもの、山本だ」
*END*