B二次創作

□三崎様から
1ページ/2ページ

いつかのお礼文です。お受け取りください。
「ツナ君、あーん」
俺のスプーンから、ミントアイスがひと匙落ちた。よってこの氷菓は俺の食道を通って消化される運命を無事回避したわけだが、今そんなことはどうでもいいんだよ!
「えと……京子ちゃん?」
「もう、ツナ君。早く口開けないと溶けちゃうよ?」
ちょっと唇を尖らせて言うと、自分のキャラメルナッツをぱくり。そしてまた、ひと匙差し出してくる京子ちゃん。ほら、あーん。もはや、この言葉が何を示しているのかがわからない。あーんって何だ。いつも憧れてた気がしなくもないけど、何だ。
俺が呆然と京子ちゃんを見つめていたら、また京子ちゃんは自分で食べてしまった。でもなんだか、今度は……俺が落ち込ませてしまったらしい。
「えと、京子ちゃん……」
「ツナくん……嫌?」
何が、と言わないところがまたあざとい。可愛い。ってそうじゃない。そうじゃないだろ俺。なんで彼女に悲しそうな顔させてるんだ、と自分を強く叱咤する。そして、絶叫する自分を押さえ込みながら、京子ちゃんの手首をそっと取った。
「ツナ、く」
「嫌じゃないよ」
何言ってんだ俺、と慌てる自分と、戸惑う京子ちゃんをもっとみたいと欲する自分。その狭間にいる、そういえば、ミントはどうしたんだっけ?と考える自分は放っておく。
俺の真剣さに対してか、京子ちゃんはまたひと匙キャラメルをすくう。正直、キャラメルよりも一口欲しいものがある。けど、きっと言ってしまえば、俺はがっついてる馬鹿ってことになるから、大人しく甘いアイスで我慢しよう。
そんなことを考えていたら、京子ちゃんがスプーンを落としていた。カラン、という音と共に、俺ははたと気づく。あれ、そういえばあのスプーン、京子ちゃんが口つけてたやつだ。うわ、すごく残念。じゃない。馬鹿か、俺は。
ぐるぐるする思考をよそに、新しいスプーンを取ってこようと席を立った。けど、直後、京子ちゃんに腕を引かれる。え、と声を漏らした時には、京子ちゃんのキャラメル色の瞳が俺を見つめていた。
「ツナ君……本当はね」
私がしてみたいの。
何が、と言わないところがあざとい。可愛い。というか、キャラメルはどうしたの?そんな下らないことは言わせまいとするかのように、京子ちゃんの手のひらが俺の頬を包む。そっとそれに手を重ねてーー
「……冷たい」
「当たり前でしょ、氷嚢なんですから」
降ってきたのは、触っている氷より冷たい口調。閉じていた瞼をこじ開けると、憎たらしい位綺麗な青い瞳が俺を嘲笑っていた。
「おはようございます。随分と、楽しい夢をみていらっしゃったようで」
「お前のせいでな」
はいはい、と俺の恨みがましい声をスルーする骸は、内心爆笑しているんだと思う。こいつの作った夢にときめいてしまった自分が情けない。けど、京子ちゃんを出したのは卑怯だと思う。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ