温室で暮らす彼女

□音駒高校
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黒尾×彼女



高校3年目の春、今年は桜が満開だ

去年は早咲きで気づいた頃には葉桜に近くて違和感があったのを覚えている

昨日まで二年生だった俺は休み明けから三年生になる


「クロ?」


こいつもそうだ


「んぁ?」


「...ぼーっとしてる...具合わるい?」



そんなことないと言えば、良かった。と笑う

まゆとは所詮、幼馴染で研磨も同じだ

昔から目立つことが苦手な奴で俺と研磨の後ろに居た



ざわざわ



「...」




というのも、こいつの見た目が原因だったりするわけで



「おい、見ろよ!あれ」


「どこ!」


「ほら!でっかい黒い奴の隣!」



町を歩けば、ざわつく



「かわいいな」



すれ違う男も女も一度立ち止まり振り返る



「見てみてあの子、かわいい」



「ほんとだーモデルさんかな」



厄介なのは本人が気づかないということだったりするわけで



「クロ...」



「んー?」



「...とれた」



ふわりと彼女は笑った

その手に握りしめられているのはキーホルダーだ

只今、ゲームセンターで暇潰し中だった黒尾とまゆは研磨と夜久を待っている

本当は部活の物資を買いに来たんだけどここに来て忘れ物に気づいたらしい



「これ...」


「ん?」



「...クロにそっくりだからすき...」



「...そりゃどうも」



幼馴染としていなければ確実に撃ち抜かれてたな、と彼女の知らぬ間に深呼吸をした



「今度あれ...とってきていい?」



「どれ?」



あの猫さんと指差したのはビッグクレーンゲームだ



「こらこらまゆチャン?あれは持って帰るのが大変でしょーが」



黒猫ワンダフルとか言うアニメだかゲームのキャラクターらしいが、でかすぎるから駄目だと一蹴した



「だって...」



ただ、分かって欲しい



「クロ、そっくりなの...」


「ダメ」



こんなに涙を溜められたらいくら主将でも揺らぐ







「......だめ?」



ましてや、十年来の片想い相手に言われたら駄目とは言えない

すまんと黒尾は胸のうちで部員達に謝った



「でかっ」



「...夜久!コレ...クロが取っ手くれたの!」



「あまっ」

「っせ!!」



天使の微笑みに負けずと劣らないその嬉しそうな笑顔に研磨が良かったねと言うときゅっとぬいぐるみを抱き締めて頷いた

研磨がまゆと喋ってる間に黒尾と夜久が何やら揉めているが



「けんま、...携帯あった?」



「ん。お店の人が持って待っててくれたから直ぐに見つかった」



「よかった...」




二人は知るよしもない。



「てめ、黒尾!甘すぎんたよ!」



「いで!仕方ねぇだろ!暇だったんだよ」



「嘘つけ!明らかに私情だろ!ばぁか!どうやって持って帰るんだよ!」

「だぁー!俺が持ちゃいいんだろ!」




「そー言うこっちゃねぇよ」




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