旧 拍手文

□拍手文 No.4
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花といえば、昔から日本では桜。

桜の凛とした美しさは、あの人に似ている。
春の柔らかな木漏れ日は、めったに見ないあの人の微笑みに似ている。

寒い冬が終わって、雪が溶けて。もうあなたの心にも、きっと春が舞い込んだでしょう?

――ねぇ、土方さん。



窓をたたく強い雨はまだ続くでしょう、って。ラジオから流れる声が伝えている。
握り締めたケータイ。耳元をくすぐる忘れたはずの、懐かしい声。泣いているように聞こえるなんて、都合のいい僕の思い込み?

土方さん。あなたはもう一度、あの頃に戻りたいのでしょうか。
あの人の為と別れを告げたのに、まだ迷っている僕はまるで春を待つつぼみのよう。


桜のような美しさと、木漏れ日のようなあなたの微笑み。
冬が終わって、雪が溶けて。ねぇどうか、あなたの心にも春が舞い込んだと信じさせてよ。




「別れましょう」
別れを告げたのは僕。あの人に迷惑をかけたくなかった。あの人の足枷になりたくなかった。

僕の小さな恋が終わっても、街の景色は何も変わらない。それが余計、ひとつだけここに足りないものを教えてくる。

【いつもの場所】と決めていた駅の前。もうあの人はいないのに、揺れ動く心は僕をそこへ向かわせる。


無意識にベッドであなたの温もりを探しています。
物音がするたびに、あなたがいるんじゃないかと錯覚します。

ねぇ、そんな僕はまたあなたの手を握りたいのでしょうか。
きっと今、僕は揺らいでる。販売を抱くかすみのように。


ふわりと香る花の香り。麗しい、なんて言葉が似合うあの人の横顔。
頬を伝った雫が作った、小さな涙の水たまり。水面に浮かぶ光が踊る。

やっぱり僕にはあの人が必要で。忘れるなんて出来なくて。
思わず家を飛び出した僕が見たのは、さっきよりもずっと綺麗な街の風景。



あぁ、やっぱり僕らは、もう一度この花を咲かせるんだろう。
――諦めかけた、恋という花を。

【いつもの場所】で開いていたあなたの傘。それはまるで、僕を待っているようで――…。





花といえば、昔から日本では桜。


桜の凛とした美しさは、あの人に似ている。
春の柔らかな木漏れ日は、あの人の微笑みに似ている。


優しく重なる、互いの唇。少しだけ熱っぽい吐息。二人で紡いでいく時間。

冬が終わって、雪が溶けて。
土方さん、あなたが僕の心に春を舞い込ませてくれました。




花といえば、昔から日本では桜。
でも、僕にとってもあなたは桜なんです。




「―――ね、土方さん」





BGM 花は桜 君は美し
by いきものがかり





*掲載期間*
14.03.17〜14.05.05
 

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