ハイキュー 短編
□恋が始まる効果音。
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「ひ〜な〜た〜」
ぎくり。
例えるならきっと、そんな音がしたと思う。後ろから聞こえたのは、いつもなら優しく聞こえるはずの声。
――そう、いつもなら。
「すっ、すすす菅原さん…!あー、えっと、何ですか…」
「あのさ、ちょっと部活終わったら残ってくんね?」
もちろん、一人で。
――大地さんも怒らせたら怖いけど、菅原さんだってそーとーだと思う。後ろに黒い煙が見える…。
そんな風に言われたら、
「――ハイ…」
おれに拒否権なんて、ない…。
.・.*.・.*.・.
「で、日向。なんで俺のこと避けてんの?」
部活終わり、部室にて。
菅原さんは直球でそう聞いてきた。
―――そう。ここ最近、おれはずっと菅原さんを避けている。
「気づかないとでも思ったん?あんだけ『菅原さん、菅原さん』って寄って来てたのに急に来なくなったら、そりゃ、誰でも気づくべ」
「うっ……」
言葉に詰まっていたら、窓に腰かけていた菅原さんの表情が悲しげに歪んだ。
細く開いた窓から、すっかり涼しくなった風がお互いの髪を揺らす。
「…なぁ、日向。俺のこと、嫌いにでもなったか?スタメンでもない三年生に、もう用はない?」
「……っ!!そんなことない、です!」
必死に首を横に振る。菅原さんのことを嫌いになるなんて、そんなこと、絶対にありえないから。
「あの、変な話かもしれないんですけど、聞いてくれますか…?」
――菅原さんを避けていた理由を言いたくて、たどたどしく言葉を紡ぐ。
菅原さんは視線で先を促してくれた。
「えっと、あの、最近おれ、菅原さんを見てるとおかしくなるっていうか、変になるっていうか」
「変になる?」
「なんかこう…胸の辺りが、ぐぁってなってぎゅーってなって……でも、原因が分からなくて」
「だから俺を避けてたの?」
俯いてこくん、と頷く。菅原さんがこっちに近づいてくる気配がした。
――なんでそんなことで、って怒られるかな。呆れられちゃったかな。あぁもう、どうしよう。
「ひなた」
優しい菅原さんの声。両手で頬を包まれて、顔を上げさせられて。思いの外近くにあった菅原さんの顔にびっくりする。
「すがわら、さ、」
「日向、それってさ。【恋の効果音】じゃないのかな」
柔らかい熱が唇に触れる。
――あぁそうか。おれは菅原さんに、恋、してたのか。
*恋が始まる効果音*
(ぐぁってなってぎゅーってなって。ドキドキするんだ。)
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