ハイキュー 短編

□恋が始まる効果音。
1ページ/2ページ




「ひ〜な〜た〜」


ぎくり。

例えるならきっと、そんな音がしたと思う。後ろから聞こえたのは、いつもなら優しく聞こえるはずの声。

――そう、いつもなら。


「すっ、すすす菅原さん…!あー、えっと、何ですか…」

「あのさ、ちょっと部活終わったら残ってくんね?」


もちろん、一人で。

――大地さんも怒らせたら怖いけど、菅原さんだってそーとーだと思う。後ろに黒い煙が見える…。

そんな風に言われたら、


「――ハイ…」


おれに拒否権なんて、ない…。




.・.*.・.*.・.




「で、日向。なんで俺のこと避けてんの?」


部活終わり、部室にて。
菅原さんは直球でそう聞いてきた。

―――そう。ここ最近、おれはずっと菅原さんを避けている。


「気づかないとでも思ったん?あんだけ『菅原さん、菅原さん』って寄って来てたのに急に来なくなったら、そりゃ、誰でも気づくべ」

「うっ……」


言葉に詰まっていたら、窓に腰かけていた菅原さんの表情が悲しげに歪んだ。

細く開いた窓から、すっかり涼しくなった風がお互いの髪を揺らす。


「…なぁ、日向。俺のこと、嫌いにでもなったか?スタメンでもない三年生に、もう用はない?」

「……っ!!そんなことない、です!」


必死に首を横に振る。菅原さんのことを嫌いになるなんて、そんなこと、絶対にありえないから。


「あの、変な話かもしれないんですけど、聞いてくれますか…?」


――菅原さんを避けていた理由を言いたくて、たどたどしく言葉を紡ぐ。
菅原さんは視線で先を促してくれた。


「えっと、あの、最近おれ、菅原さんを見てるとおかしくなるっていうか、変になるっていうか」

「変になる?」

「なんかこう…胸の辺りが、ぐぁってなってぎゅーってなって……でも、原因が分からなくて」

「だから俺を避けてたの?」


俯いてこくん、と頷く。菅原さんがこっちに近づいてくる気配がした。

――なんでそんなことで、って怒られるかな。呆れられちゃったかな。あぁもう、どうしよう。



「ひなた」



優しい菅原さんの声。両手で頬を包まれて、顔を上げさせられて。思いの外近くにあった菅原さんの顔にびっくりする。



「すがわら、さ、」

「日向、それってさ。【恋の効果音】じゃないのかな」



柔らかい熱が唇に触れる。

――あぁそうか。おれは菅原さんに、恋、してたのか。





*恋が始まる効果音*
(ぐぁってなってぎゅーってなって。ドキドキするんだ。)





→NEXT あとがき
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ