うた☆プリ 長編
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「…こうしていても仕方ありません。今日はもう帰りましょう」
トキヤの声で、一同はふいに我に返り、いそいそと帰り支度を始めた。
スタジオから寮までの帰り。
何も変わらない、いつもの光景。
――そこに、翔がいないことを除いては。
まるでたくさんのパズルピースが1つだけ足りないような、そんな違和感。
普段はスルー出来る違和感も、5人が揃っているからか、さっきあんな会話をしたからなのか、妙に気になる。
「………」
結局、誰一人としてロクな言葉を発しないまま、5人は寮に到着する。
「お疲れ」
「お疲れさま」
「お疲れさまでした〜」
一人、一人と各部屋へ消えていく。
最後に残ったのは、トキヤと音也。
いつもは騒がしいほどの音也も、何を想っているのか、考えているのか、やけに静かだ。
はぁと溜め息を吐いて、トキヤは言葉を紡ぐ。
「――音也。貴方はムダに考えると悪い方へ考えてしまうんですから。いつものように楽観的に考えていなさい」
告げると、赤い髪がぱっと跳ね上がった。
「…ごめんごめん!やっぱり俺らしくないよね。ちょっと疲れてるのかも。今日は早く寝よっと――――…」
笑顔を見せて部屋のドアを開けようとした音也。
それなのに、誰もいない部屋のはずなのに、ひとりでに部屋のドアが、開いた。
ドアの影から浮かび上がる、人影。
さらさらの金髪。
洒落た帽子。
髪を留める赤のピン。
ドアノブを握る、黒い爪。
…空よりも澄んだ、蒼い瞳。
「―――どう、して…ここに…?」
―――アメリカにいるはずの【来栖翔】が、確かにそこにいた。