一日一題 小説

□触れる
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部活後の自主練も終わり、影山と一緒に体育館を出る。

はぁっと吐く息が白く染まった。


「今日は寒いな…」


小さく呟けば、寒いからかいつもより近くを歩いていた影山も無言で頷く。そんな、些細なこと。


「もうすぐ冬だな。おれさ、冬って好きなんだよな!」

「はぁ?寒いだけじゃねぇか」

「だってさ、ちっちゃいことが嬉しくなるじゃん。教室に入る温度差とか、自販機でコーンスープ飲めることとか!それって幸せじゃね?」


いつもだったらここで「くっだんねぇ」とか「お子様が」とかいう言葉が返ってくる。今日もそうだと思ったから、あえてそんなことを言った。

そうだと思った――のに。



「じゃあ、これで幸せか?」



ふわり、と温もりに包まれる左手。

自転車を握っていたはずの左手が、いつの間にか影山の右手に包まれていて。


「なぁ、幸せか?日向」


少しぶっきらぼうに、頬を赤く染めながら影山がそう聞いてくるから。



「…幸せだよ!ばーかっ!!」



熱い顔のまま、そう叫んでやった。






*握りしめる*
(手のひらから、全て伝わるから。)


2014.11.25
 

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