一日一題 小説
□気づく
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「そっ、総司っ!」
縁側を歩いていたら、中庭から平助に声をかけられた。
――これから土方さんの部屋に行こうと思ったんだけどなぁ…。
ま、いいか。なんか面白そうだし。
「何があったのさ」
その辺にあった草履をつっかけて中庭に降りる。
その瞬間、平助に襟元を引っ張られた。
いっきに平助の顔との距離が縮まる。
「…なに?僕、平助と顔付き合わせるような関係になった覚えはないんだけど」
「おっ、俺も別にねーけど!……なんか違うんだよなー…」
ぶつぶつと何か呟いている平助。どうでもいいんだけど、そろそろ屈んでいる腰が痛い。体格差を考えてよね…。
「もういいでしょ。そろそろ離し――」
離してよ、と言う前に聞こえてきた声が。
「おー、平助。何してんだ?」
「!?!?」
あ、平助の手が離れた。この隙に逃げよう。
そっと二人の傍を離れ、物陰から様子を伺う。二人でなんか話して、左之さんが平助の頭を撫でて、平助が頬を染めて――って、あ。
「ふぅーん…なるほどね……」
――面白くなってきたかも。
そう一人呟いて、僕は悪戯を仕掛けるために土方さんの部屋へ向かった。
*気づく*
(平助は左之さんに恋、している)
2014.11.26