一日一題 小説
□想う
1ページ/1ページ
撮影が終わってスタジオから出ると、廊下に見慣れた後ろ姿が見えた。
「トキヤー!」
少し声を張り上げて小走りで駆け寄ると、同じフロアで撮影をしていたらしいトキヤが振り向く。
「…翔。お疲れ様です」
「お疲れっ!もう撮影終わりか?一緒に帰れる?」
帰れればいいなーなんて淡い期待を込めながら聞くと、トキヤは少し考える素振りを見せてから「……いいですよ」と頷いてくれた。
――やりぃ。
心の中で小さくガッツポーズ。
「じゃあ、帰る支度してくる!ちょっと待ってて!!」
「はい。では、また後ほど」
「おぅ!じゃーなー!」
急いで楽屋に戻って、帰る支度をする。
少しでも早く。一秒でも長く一緒にいられるように。
まだ、まだ伝える気はないけれど。
いつか隣を歩く距離が、少しでも縮まるといいなって。
そんな希望を胸に隠したまま、今はただ、君を想わせて。
*想う*
(いつかきっと伝えるから)
2014.11.27