一日一題 小説

□想う
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撮影が終わってスタジオから出ると、廊下に見慣れた後ろ姿が見えた。


「トキヤー!」


少し声を張り上げて小走りで駆け寄ると、同じフロアで撮影をしていたらしいトキヤが振り向く。


「…翔。お疲れ様です」

「お疲れっ!もう撮影終わりか?一緒に帰れる?」


帰れればいいなーなんて淡い期待を込めながら聞くと、トキヤは少し考える素振りを見せてから「……いいですよ」と頷いてくれた。

――やりぃ。

心の中で小さくガッツポーズ。


「じゃあ、帰る支度してくる!ちょっと待ってて!!」

「はい。では、また後ほど」

「おぅ!じゃーなー!」


急いで楽屋に戻って、帰る支度をする。
少しでも早く。一秒でも長く一緒にいられるように。


まだ、まだ伝える気はないけれど。

いつか隣を歩く距離が、少しでも縮まるといいなって。

そんな希望を胸に隠したまま、今はただ、君を想わせて。




*想う*
(いつかきっと伝えるから)


2014.11.27
 

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