うた☆プリ 短編
□Devenez heureux...
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※春(→)←音←翔 です。
「なっなみ〜!!」
――あぁ、もうイヤだ。
その口で、他の人の名を呼ばないで。
叶わない恋だということは、最初から知っていた。
幼なじみだし、アイツは俺のことを友人としか見てないだろうし、男同士だし。
――何より。
「俺ね、七海が好きだよ〜」
「もう一十木くん、からかうのは止めてください」
アイツは―――幼なじみで、友人で、れっきとした男で、それでも俺が好きな一十木音也は、同じクラスの七海春歌のことが好きだから。
気づいたときには終わっていた、恋。
(七海、まだ冗談って思ってんのか…)
――冗談だと思ってんなら、その立ち位置を譲ってくれよ。
――もし迷惑だと思ってんなら、はっきり音也に言ってくれよ。
――俺の方が音也のこと、好きなんだから…。
黒い感情が胸の内で渦巻く。
二人の間に分け入ってしまいそうな手を、胸の前で握りしめて。
なぁ、今二人の間に入ったら、音也は俺を見てくれる?
今ここで告白したら、七海のことなんて忘れてくれる?
どうしようもない考えが、いくつの頭によぎって。
それでも実行出来ないのは、
「翔〜!また七海に振られた〜」
「またかよ…お前もよく毎回毎回、飽きねえな。諦めるとか、考えねぇの?」
「え〜、やだよ。だって俺、本気で七海が好きなんだもん」
「……っ…」
――たとえ俺が音也に告白したとしても、音也は決して振り向かないことを、心のどこかで知ってるからだ。
(それから……)
俺は知ってる。
最近、七海の反応が変わり始めたこと。
――確かに、七海は音也に惹かれていること。
「…しゃーねぇな。大丈夫だ!ぜってぇ七海は音也のこと好きだって!俺様が保証するぜっ!!」
こんなにも好きなのに。
「翔がそう言ってくれると元気でるな〜!うん、俺頑張ってみるよ!!」
こんなにも想ってるのに。
「おぅ!俺はお前の友達だからなっ!!」
「ありがとう翔!俺、もう1回七海に言ってくる!」
「あぁ、頑張れよっ!!」
――さよなら、最初で最後の恋。
「………ごめんな」
*Devenez heureux...*
(ごめんなさい)
(好きになって、ごめんなさい)
(――どうか、幸せに)
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